チャイルド・オブ・ゴッド の感想

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タイトルチャイルド・オブ・ゴッド
発売日販売日未定
製作者コーマック・マッカーシー
販売元早川書房
JANコード9784152093813
カテゴリジャンル別 » 文学・評論 » 文芸作品 » 英米文学

購入者の感想

未開で野蛮、粗暴で無明な「ヒリビリイ」が次第に文明社会から脱落して、放火・殺人・死姦・死体愛好などの言語を絶する犯罪に手を染めて行く様子を、当事者のイロジカルで分裂症的な心象世界に寄り添うようにして、荒涼とした文体と癲癇症的な話法で描いた異色の犯罪小説。

分量的には中篇に近く、ページ当たりの文字数も少ないので、マッカーシーの他の邦訳作品に比べると比較的読みやすい。

感触的には、自分はまず、『響きと怒り』のベンジャミンの部を思い起こしました。

主人公のレスター・バラードは白痴ではないが、論理的な思考の所在や社会的通念の影響がほとんど感じられず、家を失って洞窟に住むようになったからは、なおさら孤独が深まり盲獣じみた気配が強まってくる。

自己認識の未熟なレスターの肖像を補完するように、要所で彼や彼の親族を知る第三者の証言が挿入される。

出版年の73年といえば、米国の連続殺人史の神話的なフィギュアであるジョン・ゲイシーやエドモンド・ケンパーがまだ現役バリバリで活躍中の頃。
著者がどれほど過去の事件に触発されたのかは知らないが、主人公の行動規範や犯行の手口は決して馴染みの薄いものではない。

犯罪心理の「なぜ?」に直接答える部分は意図的に避けられているものの、主人公が置かれた救いのない社会的環境や業に塗れた世代間の因縁などは文化的なコンテクスを飛び越えてただちに感応できるほど生々しく描かれており、プロファイル的なノンフィクションの類と平行して読むと一層理解が深まるような気がします。

ところで『猿の惑星』や『オズ』『127時間』の主演で有名なジェイムス・フランコが監督した映画版のほうもすでに完成しているようですが、この人間性がほとんど形骸と化した僻地の世界をどこまでヴイジュアル的に再現できるのか、そちらも興味深いです。

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