プレステップ宗教学 (PRE-STEP 8) の感想

「宗教学入門」の本はけっこうあるが、哲学的話題に踏み込みすぎて読みにくかったり、情報が妙に多くて要点がわからなかったりと、ズブの素人にはこれはキツいだろう、と思わせるものが少なくなかった。本書は違う。宗教（学）からはだいぶ遠い普通の学生が読んでも、非常に取っ付きやすくまた理解しやすい内容と体裁が用意されている。儀礼や神話、修行と戒律、死後の世界、シャーマニズム、巡礼など、過去から現在まで宗教を考える上では外せないトピックから、宗教学に関する様々な論者・立場の紹介、教団の役割、現代日本の宗教状況まで、幅広い話題をカバーしつつ、しかしほどほどの分量で適切にまとめてあり、読みやすい。ビジュアル豊富なのは理解の助けになって嬉しいし、またオマケでついている「宗教の格言」「宗教の定義」の言葉も味わい深い。教科書らしく、自主的に回答をひねり出すべき「課題」も設けられており、また次のステップに進むための著作・映画案内も妥当な選択だと思った。今後しばらくは、本書を学生向けのスタンダードな教科書として活用できるのではないか。