愛することができる人は幸せだ の感想

アマゾンで購入する

参照データ

タイトル愛することができる人は幸せだ
発売日販売日未定
製作者ヘルマン ヘッセ
販売元草思社
JANコード9784794208606
カテゴリ文学・評論 » エッセー・随筆 » 外国のエッセー・随筆 » ドイツ

購入者の感想

 これまで、本書を何度読み返したことだろう。詩やデッサン風のコント、断章的なエッセイ風回顧譚など、形式にとらわれず、自由なスタイルで編集された本書は、そのまま詩集であり、御伽噺であり、人生哲学の書であり、また比較的長文の書簡でもある。主として女性をめぐるエピソード(それも多くは作者の分身のような人物のほろ苦い経験)が縷々連ねられているが、それぞれが佳境に入るなり、とたんに、人生の縮図とも、俯瞰図ともいうべき視界が開け、このとき、ヘッセの詩的人生洞察の言葉が、わたしたちの理性の中の何ものかを目覚めさせる(そのとき、一瞬だけ、人生が芸術作品そのものであるかのような錯覚をあたえられる。もとより、そういえるのは、ほかならぬヘッセその人のそれであろうけれども)。各場面は読者に、人生を賢明に(世界を愛するように)生きよと語りかける。賢明に生きるにあたって、これまで、得ようとしてなかなか得られなかった言葉が、ヘッセの苦渋の人生を通じ精錬された、黄金のポエジーのようなそれとして、象嵌・陳列される。本書は言葉の宝石箱であり、ヘッセの言葉は錬金術師のそれである。言葉を得るということは、すなわち、認識や判断を得るということにほかならない。

 わたしは、賢明とはほど遠い人生を送っているものの、ヘッセとの邂逅が、自分のこころの深い部分で、何かを変えたことだけはたしかである。わたしをもふくめ、人生の中で、斜にかまえた姿勢でしか、世の中に対することのできなかった人々に、本書は現実を、もともとあるべきもの、意味あるものとして、受け入れられるよう語りかけてくれる。それによって、世界への目を開かせられ、世界への愛を呼び覚ませられた人たちは、幸せである―本書は、感銘を受けることのできる人と、そうでない人とに、大きく読者層がわかれるかもしれない。そうとはしても―そのように、世界に対し積極的な何かを感じ、世界を語り始めることを必要としている人たちにとって、ヘッセの言葉は、忘れがたい道しるべの役割を果たしてくれるものと思う。

あなたの感想と評価

コメント欄

関連商品の価格と中古

愛することができる人は幸せだ

アマゾンで購入する
草思社から発売されたヘルマン ヘッセの愛することができる人は幸せだ(JAN:9784794208606)の感想と評価
2017 - copyright© みんこみゅ - アマゾン商品の感想と評価 all rights reserved.