兵頭二十八の農業安保論 の感想

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タイトル兵頭二十八の農業安保論
発売日販売日未定
製作者兵頭 二十八
販売元草思社
JANコード9784794220080
カテゴリジャンル別 » 科学・テクノロジー » 農学 » 一般

購入者の感想

 兵頭流軍学のキーワードに、「常に『最悪事態』を想定せよ」「物事を一から考えよ」という鉄則があります。
 日本国が備えるべき「最悪事態」とは、一体何なのでしょう? 
 まあ、ある日突然、イカレた敵国のイカレた独裁者が発狂して、日本に対する攻撃命令を下してしまい、核弾道ミサイルが大都市に撃ち込まれる――これが「本当の」最悪事態には違いないのでしょうが、ひとまず置くとして。
 それはエネルギー(なかんずく石油)と食料の、海外からの輸入が断ち切られてしまうことである、と兵頭氏は説きます。
 んなことあるわけねー、と失笑しているアナタ。
 判りませんよ。
 バブル崩壊やリーマンショックを予測できた経済学者が、果たして学者全体の何パーセントいましたか? 絶対安全と謳われた日本の原子力発電所も、「想定外の事態」の前に事故を起こしてしまったのではありませんか? ミッドウェー海戦での南雲艦隊は、「敵空母は居ない筈だ」という先入観に囚われた結果不覚をとったでしょう?
 具体的に云うと、もしイスラエルとイランの間で、湾岸諸国をも巻き込んだ核の投げ合いが発生したら? またもし、経済崩壊の瀬戸際に立たされてヤケクソになった某国の独裁政権が、マラッカ海峡や南シナ海に機雷をばら撒いたら?
 ガソリンがリッター1万円どころか、日本経済、いや社会そのものがブラックアウトしてしまう可能性すら、多分にあるわけです。(反原発の皆さんは、「最悪の事態を考えろ」とか「重大な事故の可能性がある」とか主張するわりに、こういう真の「最悪事態」への想像力はまるで働いていませんよね。なんでだろ?)
 そしてマズイことに、仮に幸運(と関係各国の努力)の結果そのような「有事」が当面発生しなかったとしても、あと50年もすれば、石油はほぼ確実に枯渇してしまうのです。今や中東の大油田ですら、原油が自噴しなくなってきており、大量の海水を地下に注入して、その圧力によって原油を回収している有様だそうです。新興国のエネルギー需要はますます増大し、全世界の原油生産は更に減少する――安い石油を思う存分使えた時代は、もはや黄昏を迎えつつあります。シェールガス? メタンハイドレード? ……まあ、屁のつっかいぐらいにはなるでしょうかね。

WWIII中のイギリスの食料事情は実は・・・だった(ネタばらしはしない)という点と、日本の戦中戦後の食糧事情については例によって氏らしい分析を楽しめる。最近言及するようになった農については、氏のスキルは判断できないので★1を減じる。間違っているという訳ではない。(以後は要約ではなく感想で、)老後の自然農法の分野では自給生活について畑作5アールと自然養鶏いう本もあり、機械化水田などプロでもやりきれるものではないこと自体は目新しい主張ではない。しかしそういう生活を選ぶと変わり者と呼ばれ世を捨てる覚悟で、農家以外は敷居も高いご時世で、戦略のプロに大枠の中でそれで良いと言われると心強いのは確か。自分だけ自給しても有事には略奪に合うだろうから、世の中全体が変わってくれた方が良い。なお、世の中一般では「自給自足」というと野菜を思い浮かべるらしいがあれはお遊びで、真の危機で自給すべきは「カロリ」「蛋白」「肥料」「人力畜力」など。花・果樹・野菜の順に切りすてられるだろう。それでも野菜の小耕地が維持されていれば有事には適切な指導で作物畑に生まれ変わるとすれば、まあおっしゃる通りか。そんなことを考えさせる本です。

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