人間不平等起源論 (光文社古典新訳文庫) の感想
参照データ
タイトル | 人間不平等起源論 (光文社古典新訳文庫) |
発売日 | 販売日未定 |
製作者 | ジャン=ジャック ルソー |
販売元 | 光文社 |
JANコード | 9784334751623 |
カテゴリ | 人文・思想 » 哲学・思想 » 西洋思想 » 西洋哲学入門 |
購入者の感想
『人間不平等起源論』は中篇だが、数あるルソーの著作の中でも、彼の思想の全体像が見事に表現された傑作である。『エミール』や『新エロイーズ』もとても面白いが、なにしろ長い。『不平等起源論』には、「野生人」「言語の起源」「憐れみの情」「社会や道徳の起源」「所有と階級の発生」「文明人の悲惨」など、ルソーの思想の核がバランスよく語られている。75年にわたって読み継がれてきた本田・平岡訳(岩波文庫)も読みやすい名訳だったが、今回、中山元氏による詳細な解説が付された新訳が現れた。原著には実質的な目次がないので、訳者の小見出しはとても有用。旧訳と比べてみよう。「実際、これら一切の相違の真の原因は、次のようなものである。つまり、未開人は自分自身の中で生きている。社会に生きている人は、常に自分の外にあり、他人の意見の中でしか生きられない。そしていわばただ他人の判断だけから、彼は自分の存在の感情を引き出しているのである」(岩波文庫、p129)。「野生人と文明人の違いを作り出している根本的な原因は、まさにここにある。野生人はみずからのうちで生きている。社会で生きる人間は、つねにみずからの外で生きており、他人の評価によってしか生きることができない。自分が生きているという感情を味わうことができるのは、いわば他人の判断のうちだけなのである」(中山訳、p188)。