泉に聴く (講談社文芸文庫) の感想

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参照データ

タイトル泉に聴く (講談社文芸文庫)
発売日販売日未定
製作者東山 魁夷
販売元講談社
JANコード9784061960756
カテゴリ文学・評論 » エッセー・随筆 » 日本のエッセー・随筆 » 近現代の作品

購入者の感想

日本画の至宝だった著者は第2次大戦前に国費でドイツに留学しドイツ語も堪能であり、日本・海外の絵画史だけでなく、諸外国の古典文学やベートーヴェン・モーツァルト等のクラシック音楽にもとても造詣が深く

少年期の両親の愛憎により垣間見た人間の業や、第2次世界大戦の悲劇、戦争末期に母と弟を無くし画家として成功する前に天涯孤独となったそれらの経験を、知己であり人生の先達と慕った川端康成の自殺後の回想で、「暗黒と苦悩を持つものは、魂の浄福と平安を祈り願う」と表現していますが、とても深遠な洞察による、ヨーロッパ旅行記等を含むエッセイ集です。

初版は1972年の出版ですが、芸術(絵画、文学、音楽)志す方にとっては必読の書の一つではないでしょうか?

〜以下、最終章より抜粋〜

ベートーヴェンでもモーツァルトでも、最も人間的な悲しみを味わい尽くしていたから、デーモンの力が美を人類に与える力に成り得たのであろう。

涙ながらにパンを食べたことの無い者
苦悩に満ちた幾夜をベッドの上で泣き明かしたとこの無い者
お前は天上の力を知らない

ゲーテのヴィルヘルム・マイスターの中の琴弾の老人の言葉が浮かぶ

デーモンに憑かれた(日本)民族は、異常な進展を遂げて繁栄を誇ってはいるが、そこには人間性の破壊による精神の頽廃が、暗黒の淵を開いて待っている。今や全てが狂的で魔的な力の暴走の中に在る。ブレーキとなるものは、いま、多くの人が失いつつある、素朴で、謙虚で、自然との調和を考え、情緒と潤いを大切にする、人間らしい生き方ではないだろうか。

ティル・オイレンシュピーゲルの声が聞こえる。
「馬車よ、ゆっくり走れ!」

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