田中角栄 - 戦後日本の悲しき自画像 (中公新書) の感想

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参照データ

タイトル田中角栄 - 戦後日本の悲しき自画像 (中公新書)
発売日販売日未定
製作者早野 透
販売元中央公論新社
JANコード9784121021861
カテゴリジャンル別 » 社会・政治 » 政治 » 政治入門

購入者の感想

柏崎の農村から出て、政治を使って利益を地方に分配する戦後型政治システムを作り上げた田中角栄の一代記。戦中世代として苦しんだ経験から「戦争しない、国から金を引っ張って豊かになる」という強烈なメッセージで、辺境、下層、若者といった、ムラ社会で軽んじられていた有権者から「盟主」と称されるほどの支持を受け、国会へ送り出される。そして角栄が東京から引っ張ってきた予算で橋をかけ、トンネルを掘る。

初当選から首相になるまでの快進撃がやはり一番面白い。あふれる才知や心遣いで、周囲の政治家、官僚を角栄シンパにし、あっといわせる方法で難題を片付けてしまう。角栄逮捕後、著者は志願して新潟支局に異動し、越山会に密着取材する。城代家老・本間幸一は越山会役員名簿を手渡し「新潟三区を知りたくばこの人達に聞きなさい」という。これでもかと角栄を叩いていた朝日の記者に快く門外不出の名簿を渡す、この越後人の純情ともいえる懐の深さが角栄を支える原動力になったのだろうか。

直に見た越山会の結束ぶり。周囲の人を虜にする田中の茶目っ気たっぷりな発言。資料取材に著者の見た田中像がオーバーラップし、生き生きとした人物伝になっている。また、単語や文章配置も厳しく吟味したであろうことも感じる。流れや接続がよく、単語も易しくて読者に負担を与えないよう配慮している。貿易自由化の項目で「NYで『王将』を唄い上機嫌」というエピソードも挿入するように、小難しい政策の話題では挿話や角栄の肉声をはさむ配慮もある。400ページと新書としては大部だが、ユニークな挿話、語録が多く、読み進めるのが惜しく感じる本だった。評伝としても政局ジャーナリズムとしても、非常に優れている。

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