「レ・ミゼラブル」を読みなおす の感想

ユゴー研究家による小説「レ・ミゼラブル」の読み解きです。2012年末に公開されたミュージカル版映画（ヒュー・ジャックマン主演）を鑑賞したのに合わせて、久しぶりに再読しました。

ユゴーが自著の売れ行きを尋ねた「？」に対して、出版元からの回答が「！」というやりとりは「世界一短い手紙」として有名です。本書によれば、そんな手紙が実在したという確証はないようですが、ともかく、『レ・ミゼラブル』は当時のパリを席巻する大ベストセラー小説だったそうです。とても長いですよね。

本書は、膨大なテキストの中から著者がセレクトした重要場面を、左ページにフランス語原文、右ページに日本語訳文という見開き構成で紹介しながら、ユゴーの真意、その背景について解説が挟まれるという構成です。フランス語は読めなくても大丈夫。この解説がとても面白い。ナポレオンとヴァルジャンの対称性、ジャン・ヴァルジャンという名前に込められた意図、「鏡」というキーワード、カーニバルとしてのレ・ミゼ、などなど、専門の研究者ならではの深く広い洞察が展開され、ただただ、うなるしかありません。

一般向けに書かれたものなので、気軽に読めます。本文中ではユゴー自身の他作品や他の作家の作品への言及も多く、巻末の参考文献も充実しているので、本書をきっかけにさらに広い世界へ探求を進めることも可能でしょう。ミュージカルのファンの方から、小説の愛読者やフランス語・フランス文学の初学者の方まで、広く一読をおすすめします。