発達障害のいま (講談社現代新書) の感想

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参照データ

タイトル発達障害のいま (講談社現代新書)
発売日販売日未定
製作者杉山 登志郎
販売元講談社
JANコード9784062881166
カテゴリジャンル別 » 人文・思想 » 心理学 » 発達心理学

購入者の感想

2011年7月20日発行のこの本は,発達障害の研究と実践に関わる最新の情報が盛り込まれている。発達障害のある子どもたちや青年たちといくらかかかわることのある自分にとって,最も役に立ったというか,頭の整理になったと感じられたのは,発達障害とトラウマとの関係に関する説明の部分である。発達障害(その中でもとりわけ自閉症スペクトラム)は,近年,遺伝的な素因の研究が進んできたが,遺伝的要因だけで発達障害になるわけではなく,そこに環境上の要因が掛け合わさることによって発達障害が発現するという図式になる。ここまではすでに知られていたことだが,環境要因の中で最も決定的な影響を与えるのがトラウマだというのが,本書の主張の一つである。そもそも,自閉症スペクトラム圏の人たちは,対人関係の中で生じうるトラウマ的な体験に対して脆弱である。そうしたことも考え合わせれば,著者の指摘はよく理解できる。では,トラウマを防ぐにはどうしたらよいのか,また,トラウマを抱える発達障害児・者に対しては,どのような治療・教育的働きかけが有効なのか。それについては本書を読んでいただければ,多くの示唆が得られるだろう。

もう一つ,本書を読んで頭が整理できたと感じたのは,発達凸凹という考え方である。認知に高い峰と低い谷の両者を持つ人のことを,著者はこのように呼んでいる。では,発達障害とどう違うのか。著者によれば,発達凸凹に適応障害が加わったものが発達障害だということになる。発達凸凹のある人は,発達障害になるリスクを抱えているが,適切な治療や教育がなされれば,障害を回避できる可能性や少なくとも障害を軽くする可能性があるだけでなく,優れた才能を伸ばす可能性も開けるのである。特に,個人に合った教育を創り出すことで,発達凸凹のある人の中から天才的な才能を発揮する人が出現する可能性が示唆されている点は注目に値する指摘である。

なお,発達障害と精神科疾患の関係に関する著者の議論は,まさに現在進行形の問題であり大胆なところまで踏み込んでいるようにも思われる。しかし,精神科疾患に対して発達障害の観点を取り入れることで,治療効果があがりにくかった人たちへの対処法を見いだしうるとしたら,やはりこの観点からの再吟味は必要なものなのかもしれない。

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