ムース の感想

ムース。その肉はあるいは人々の食糧ともなる、物静かで大きな動物である。警戒心がつよく、子ムースをみてかわいい！と駆け寄ろうものなら、物陰に隠れてわが子を見守る母ムースに襲われかねない。しかし、とても優しい目をしているのである。なにか物憂げな、哲学者のような目で空をみつめ、悠然とゆったり歩くのである。星野道夫さんの写真は、優しく強く、自然に生きる動物達を写し出す。彼による多くのアラスカの動物達の写真。そのなかでもムースだけを収めたこの写真集は、ムースという神秘の動物のもつ大地の優しさを大いに感じさせてくれることだろう。夜遅く、オーロラの舞う澄んだ星空の下、まるで機会音のような寂しげな『声』がきこえたら、きっとそれはムースである。