福野礼一郎あれ以後全集〈1〉 の感想

「福野礼一郎あれ以後全集１」

福野礼一郎の2006年「以後」の過去の執筆をまとめた全集です。「以後」には「リーマンショック以後」という意味も込められているそうです。
全集の１には2006年1月から12月までが収録されています。ということは後５、６巻は出るということでしょうか？
初出は「エフロード」「クルマの神様」「ル・ボラン」「ＣＧ連載：クルマはかくして作られる」「またまた自動車ロン」など様々、それをＣＧがひとまとめにして出版、署名記事は著作権が福野氏に属するため、こういうことも可能なのですね。
新車の話、旧車の話、クルマにまつわる雑学、機械式時計の話まで、ジャンルはさまざまですが、当時の新型車の話でさえ、いささかも古びた話にはなっていません。
特に面白かったのは「伝説の検証：メカに関する疑問１〜３」（エフロード）で、福野氏がクルマにおける数々の都市伝説を一刀両断、痛快そのものです。「フォードＧＴ成功の要素」では、福野氏一流の旧車についてのウンチクが炸裂します。
またＶＷゴルフプラスに心酔する余り、これこそを真のゴルフとし、ゴルフに「ゴルフマイナス」と名付けてしまうクダリ、思わず笑ってしまいました。
少し残念だったのは、誤字・誤植、技術的な事実誤認、勘違いと思われる記述が散見されたことです。初出からのものと思われますが、転載にあたって推敲は行なわれなかったのでしょうか？
ちょっと嬉しかったのは「またまた自動車ロン」の文庫版にのみ掲載されていた、貴島孝雄さんとの対談があったこと、巻末に福野氏のイラストレーションがあったことです。ご承知の方も多いと思いますが、氏のイラストレーションは完璧にプロフェッショナルのものです。
福野氏のファンでなくとも、クルマ好きの皆さんにはオススメ！1冊1600円で全５、６巻とすると、ゆくゆくは1万円近い出費！…などとは考えず、美味かつ滋養満点「福野屋謹製弁当」をご賞味ください。