心臓を貫かれて〈下〉 (文春文庫) の感想

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タイトル心臓を貫かれて〈下〉 (文春文庫)
発売日販売日未定
製作者マイケル ギルモア
販売元文藝春秋
JANコード9784167309916
カテゴリ文学・評論 » 評論・文学研究 » 外国文学研究 » 英米文学

購入者の感想

全米に死刑論争を巻き起こした殺人犯の弟である著者が、愛憎入り乱れる家族の関係、何代にもわたって家族が隠し持ってきたトラウマの歴史にまで遡って、いかにして兄が殺人者になっていかなくてはならなかったかをひも解く、ノンフィクション小説です。
ゾッとするようなアメリカの闇の部分が克明に描かれています。
キリスト教国ならではの価値観の問題(人間の自然な欲求を押え付けようとするキリスト教の狭量や不寛容がひきおこしてしまうのであろう若者たちの破滅的行動、オカルト的恐怖とつきまとう罪の意識、自殺願望、犯罪への衝動…)
呪われた家族の歴史(これもまた罪の意識が引き起こす連鎖的恐怖が原因なのではないか?)
アメリカ社会の複合的な病弊(愛情の枯渇と虐待の連鎖、家庭の崩壊とアイデンティティの喪失、バックグラウンドや人種による階級社会、銃と暴力、刑務所のモラルの問題、等々)
恐ろしいのは、この話が特別な人たちに起こるべくして起こったのではないということ。
どれだけ多くのアメリカ人の家庭が似たような地獄を密かに抱え持っているのか?
と同時に、自分の生き方、子供との関係、親との関係について、考え直させられる作品です。この悲しすぎる現実に正面から向き合った著者の勇気に感動しました。とともに、その事によって著者と周囲の人々が救われる事を祈っています。この作品を選んで訳してくれた村上春樹氏に感謝します。

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