秘宝館という文化装置 の感想
参照データ
タイトル | 秘宝館という文化装置 |
発売日 | 販売日未定 |
製作者 | 妙木 忍 |
販売元 | 青弓社 |
JANコード | 9784787233738 |
カテゴリ | ジャンル別 » 社会・政治 » 社会学 » 社会学概論 |
購入者の感想
熱海を見ているので、なるほどといえるところと、疑問に思うところもある。
秘宝館という施設についての情報と考察を一冊にまとめた記念碑的な著作。類書がほとんど存在しないので、秘宝館について一通りの概要を知りたい人には本書をお勧めする。少々堅苦しいタイトルとページ数のわりに、写真が多いので気軽に通読できる。
ただし秘宝館について少しでも予備知識のある者にとって、本書は手放しで評価できる文献ではない。理由はいくつかある。
まず秘宝館を考察する上で必須の資料として、松野正人氏(伊勢秘宝館の創設者)と東京創研の川島和人氏(伊勢以外の多くの秘宝館の設計者)の証言が存在するのだが、それらを掲載した書籍は80年代に刊行済みであり、秘宝館を論じた文章の多くはそこに依拠している。そして秘宝館の位置づけは、衛生展覧会の欲望の著者である田中聡氏の取材記事「秘宝館のドラマツルギー」(ニッポン秘境館の謎所収)でほとんど尽きており、本書の議論も基本的にそれを越えるものではない。
また、本書の著者は、追加調査をおこなって過去の議論を再検討するスタイルの研究者で、著者自身の取材によって明らかになった新情報もあるが(その成果には率直に敬意を表したいが)、情報とは別に、著者が独自に提起した論点についてはむしろ粗がめだつ。とくに目についたものを以下に挙げておく。