京都〈千年の都〉の歴史 (岩波新書) の感想

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参照データ

タイトル京都〈千年の都〉の歴史 (岩波新書)
発売日販売日未定
製作者高橋 昌明
販売元岩波書店
JANコード9784004315032
カテゴリ歴史・地理 » 日本史 » 一般 » 日本史一般

購入者の感想

 260ページ余りの新書だが、内容は濃い。平安京から近代の始まりまでの京都の歴史について述べるということで内容が盛り沢山になるのも頷けるが、ただ何でもかんでも詰め込むということではなく、各時代を代表する事柄や建造物を取り上げて詳しく述べる形式を取り、また日本全体の歴史の経緯にも目配りしてあるので、歴史の流れの中で京都がどういう変遷を辿ってきたかが良く理解できる。道路(大路、小路)が死骸の捨て場、排泄の場であった平安京(室町末期まで続く)、100以上の寺の塔が立ち並ぶ「塔の町」であった院政期平安京、応仁の乱や度重なる火災などにより壊滅的な打撃を受け、上京と下京およびそれをつなぐ室町通りのみが市街となった室町末期、そして秀吉による改造で御土居掘と呼ばれる巨大な土塁と堀で取り囲まれた戦国時代など、時代により京都は様々な顔を見せる。何度も焼失、再建を繰り返しながらも、基本的には平安京の頃の町の枠組を維持してきたように何となくイメージしてきたので、京都という都市のあまりに大きな変遷に読んでいて驚くことも多かった。

 また、現在京都の観光名所になっている寺社や史跡などが、どういう歴史背景の中でいつ頃作られたかが、旧平安京内やその周辺のみならず、宇治や伏見などかなり広い範囲で取り上げてあるので、視点を変えた観光案内のような性格を持った本ともいえる。

 そして、本書の有益性を高めているのは、平安京から現在に至るまでの各時代の京都の地図が多く載せられていることである。本文に記載のある寺社その他の建物の大部分がいずれかの地図に載せてある。地図での位置を面倒を厭わずに見ていくと、時代を隔てた有名な建物が意外にすぐ近くに隣り合って建っていることなど、いろいろな発見があり楽しめる。じっくり読んでいけば、京都という町の面白さ、奥深さを十分に味わうことができる。京都にある程度詳しいという人も、余りよく知らないが関心はあるという人にも共にお勧めの本である。

このページの上の「商品の説明」には、「平安の都、日本の〈千年の都〉……今の京都には、実は平安当時の建物は一つも残っていない…… 平安京誕生から江戸期の終わりまでその歴史」を辿るという趣旨が明らかにされている。しかし右紹介だけでは本書の特質としては些かもの足りないし、本書の良さが充分に伝わらないように思われる。私自身上手く伝えることは覚束ないが、本書は桓武天皇に依る平安遷都前後(8世紀末頃)から現代(20世紀)まで、実質的には江戸中期頃までの“物理的側面”を重視した京都の街の歴史である。これをもう少し詳言すると、京都という“物理的な街”(土地・建物)の変遷(発展・変容)及び街を構成する“人”の異同を中心にして、併せて大きな変化の契機となる歴史的イベント、政治・経済・文化等の変遷も取り上げた、物理的側面を重視した京都の歴史考察論である。著者の豊富なフィールド・ワークとこれまでの発掘調査等により明らかにされた調査結果、同時代の史資料等を多用した分析・考察は優れて実証的である。本書でも写真や図表、イラスト(地図・発掘情況など)が展開されており、読者の便宜を充分に意識した構成になっている。

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