すばらしい新世界 (光文社古典新訳文庫) の感想

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参照データ

タイトルすばらしい新世界 (光文社古典新訳文庫)
発売日2013-06-12
製作者オルダス ハクスリー
販売元光文社
JANコード9784334752729
カテゴリジャンル別 » 文学・評論 » 文芸作品 » 英米文学

購入者の感想

本作品と『1984年』はディストピア小説の古典としてよく語られる作品ですよね。二つを比較しながら簡単に感想をば。

『すばらしい新世界』は行きすぎた科学主義・テクノクラートの結果の世界であり、『1984年』は行きすぎた全体主義の世界です。

両者に共通するのはどちらも「行きすぎた世界」であることと、住人にとっては舞台となる世界は「ユートピア」であることでしょう。

一方で、世界のあり方は全く違います。前者はある種現代に生きる私たちにとっても理想の世界と言えないこともないですが、後者の世界は理想の世界とは程遠い世界です。

強いて言うならば『すばらしい新世界』はアンチユートピア小説であり、『1984年』はディストピア小説といっていいのではないでしょうか。

こんな未来にはなって欲しくないと言う理性的な感想と、こんな社会なら気楽でいいかなと言う感覚的な感想が、今同居しています。
厳格な階級に区分され、幼くして徹底的な条件付けの教育がなされています。
夫婦の概念はなく、フリーセックスで子どもは出来ません。(子どもは試験管の中で作られる)
この社会には、「歴史」も「宗教」も「哲学」もありません。
人々は、只々単純労働に終始し、後は薬物で快楽を貪る生活をしています。
その労働は、合理化が出来ても決して実現しません。
何故なら、余分な時間を与えても仕方がないからです。
そんな「人間性」の失われた社会ですが、条件付けのお蔭で誰も疑問に思いません。
そこに、未開社会と言う隔離された地区からジョンがやってきます。
そこで起きる軋轢は、読者と言う立場からすれば、当然のことですが、その社会の中では、「変わった動物」程度にしか見えません。
圧巻は、第17章の未開人ジョンと支配者階級のムスタファ・モンドとの対峙の場面です。
そこで話されることには、現代社会の持つ「危険性」がそこかしこに見え隠れします。
今の社会が、この「すばらしい社会」にならない保障はないでしょう。
この本を読んで、うすら寒い感覚に陥ったのは、私だけではないでしょう。

 訳者の黒原敏行氏については、この翻訳によって現在信頼できる数少ない翻訳家であることが証明された。翻訳のすばらしさについては贅言を要さないだろう。
 また、翻訳も解説も玉石混交の光文社古典新訳文庫の中で、特筆しておきたいのは「解説」が作者ハクスリーと『すばらしい新世界』の双方のきちんとした解説になっていることで、用をなさない解説が多すぎる(もちろん光文社だけではない)昨今の実情を鑑みると、これも快挙である。
 「年譜」は細かくチェックすると、講談社文庫版などと年数が微妙に違っているが、これも目立たない仕事ながら、正しいのはすべて光文社文庫版。決して詳細な年譜ではないが、解説者の研究成果に裏打ちされた精確さが光っている。
 新訳『すばらしい新世界』は「翻訳」と「解説」のコンビネーションの質の高さで群を抜いている。

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