ノモンハンの夏 (文春文庫) の感想

アマゾンで購入する

参照データ

タイトルノモンハンの夏 (文春文庫)
発売日販売日未定
製作者半藤 一利
販売元文藝春秋
JANコード9784167483104
カテゴリノンフィクション » 思想・社会 » 戦争 » その他

購入者の感想

筆者のカットは東京を、クレムリンを、満州国新京を、そしてノモンハンの戦場を自在に映し出していく。そして1939年春から夏にかけて、世界が確かに絡まりあいながら一日一日と動いていったことをことを忠実に記していく。重層的である。そしてもちろん、焦点はしっかりとノモンハンの草原の戦場に当てられていく。悲惨で希望の無い戦争だったと言われるノモンハンが、将兵たちによってどのように激しく戦われたのか?そしてまた、「戦争は何故はじまるのか?」という疑問を持つ人には、いくつかの理由を多面的に提示してくれるだろう。少なくとも2人の人物が、明らかな悪として偶然ではない原因として挙げられている。抑制された文章が、本書に信頼感を与えている。

この本は、ノモンハンにおける戦いについてのミクロな話ではなく、国際政治の文脈の中に位置づけた上での
ノモンハンの話、もしくは、ノモンハンという地点に最終的に結実された日本および諸外国の政治的・軍事的
意思決定のプロセスについて語った本、もしくは、日本陸軍幹部、および政治的指導者がいかにダメダメだっ
たかということを語った本である。
ノモンハンの戦いの詳細を知りたいのであれば、アルヴィン・D. クックスの「ノモンハン(全四巻)」がよいかと。残
念なことに冷戦前に書かれているのでソ連側の資料、とりわけソ連崩壊後に発掘された資料を参照すること
ができなかったけども。また、ソ連崩壊後に発掘されたソ連側の資料をもとに書かれた「ノモンハン事件の真
相と戦果」という本もあるので参照されたい。

 この本は司馬遼太郎氏が集めながら,あまりにお粗末な顛末と知り,また深く傷ついた元連隊長の意向のために本にできなかったノモンハン事件の証言・資料を元に,それならば私が,と半藤一利氏が著したものだという.火力がものをいう近代戦の原則に忠実に組織されたソ連軍に対して,時代遅れの火砲・戦車しか用意できない日本軍,そして関東軍の独走を許す陸軍の体質,貧乏国であるが故に形作られた精神主義・・・ 太平洋戦争の玉砕,敗残兵は殺しなおすという悲劇はすでにこの時点で形作られていた.馬鹿な作戦にもかかわらず勇敢に戦い倒れた兵士達,戦い抜いたのに敗残の責を問われ自決を余儀なくされた将校達の無念はいかばかりだったろう.失敗から学ばない秀才の参謀達というものがどれほど愚かなのか,それがどうして形作られたのか,納得できた.半藤氏については「ドキュメント太平洋戦争」の文藝春秋版で余計な解説をつけている,という負の認識であったが,評価が変わった.やや講談調であるが,当時の国家運営,日本軍の体質をダイナミックにあらわした名著といえる.

あなたの感想と評価

コメント欄

関連商品の価格と中古

ノモンハンの夏 (文春文庫)

アマゾンで購入する
文藝春秋から発売された半藤 一利のノモンハンの夏 (文春文庫)(JAN:9784167483104)の感想と評価
2017 - copyright© みんこみゅ - アマゾン商品の感想と評価 all rights reserved.