現代政治学叢書8 イデオロギー の感想

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参照データ

タイトル現代政治学叢書8 イデオロギー
発売日販売日未定
製作者蒲島 郁夫
販売元東京大学出版会
JANコード9784130320986
カテゴリジャンル別 » 社会・政治 » 政治 » 政治入門

購入者の感想

 この本は、現代政治学叢書の一つとして出版されたもので、イデオロギーを主題としている。
 衆議院の解散が決まった直後に出版されているのがいかにも皮肉なものであるが、維新の会が台頭する野田政権にまで触れられており、文字通り最新のイデオロギー研究と言ってよい。
 イデオロギー研究の歴史から説き起こされ、現代日本における保革イデオロギーの状況の整理、実証研究によるイデオロギー構造の解明に至っている。イデオロギー構造の解明については、ヨーロッパのみならず、アジア各国における調査結果も踏まえた国際比較もなされており、日本のイデオロギー構造を考える上で興味深いデータが示されており、興味深い。もっとも、著者自ら「保守」「革新」という用語について、福祉国家化や冷戦構造の崩壊などによって流動化していると認める中で、「自分は保守であるか、革新であるか」といった設問によって、有権者や代議士らが適切に自らのイデオロギー的位置づけをなしうるのか疑問なしとはしないが、実態との乖離を思わせるようなデータは出ていないので、許容範囲とは言えるのであろう。ただ、回答者の主観に依拠する余地を減らして調査する方法は考えられるので、より客観化された設問による調査方法の確立を期待したい。
 本書の問題というわけではないのだが、イデオロギー研究の動向を知るにつけ、何となく物足りない思いに駆られるところがある。イデオロギーという言葉には、マルクスやマンハイムが使ったように、「虚偽意識」ないし「存在によって拘束された理念」というニュアンスが込められていた。こうしたニュアンスには、ある理念が現状との不一致を来たし、現状を隠蔽する機能を持つことを暴露する機能があった。ところが、現代政治学における「イデオロギー」は、信念体系といった意味合いで捉えられており、こうしたニュアンスはそぎ落とされてしまっている。アメリカで隆盛を極めた政治学において、マルクス主義的臭いを持つ「虚偽意識」といったニュアンスがそぎ落とされたのはやむを得ないことなのかもしれない。また、「存在拘束性」は統計的な調査での解明が容易でないという意味で、科学的政治学にはなじまないところがあるのかもしれない。
 だが、果たしてそれでよかったのだろうか?

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