自殺のない社会へ の感想
参照データ
タイトル | 自殺のない社会へ |
発売日 | 販売日未定 |
製作者 | 澤田 康幸 |
販売元 | 有斐閣 |
JANコード | 9784641173910 |
カテゴリ | ジャンル別 » 社会・政治 » 社会学 » 社会一般 |
購入者の感想
日本の自殺問題を,社会・経済・政治という様々な環境の側面から考える本でした。
個人の心理的要因,精神医療やカウンセリングなどの対応以外に,それを防ぐためにどのような社会環境を整えるべきなのか,という視点です。
本書では,通常の自殺対策本とは一線を画し,経済学や政治学という社会科学の視点から,ある目的(ここでは自殺対策ですが)を目指して検討される政策が「本当に有効なのか」「目的に沿った効果を生んでいるのか」「意図せざる不都合な結果はないか」等々について,実際のデータを分析することで検証しながら望ましい政策を探っている点です。また,原因分析についても印象的な議論ではなく,しっかりと事実に耳を傾けて,自殺の本当の要因を考え,導いている点も重要です。
実証分析の作法というか,どのような仮説とリサーチデザインを立て,ある事象を引き起こす原因やメカニズムを分析し,望ましい対応を考えるという,社会科学の実証分析の基本的な考え方がとてもクリアに描かれていて,今後実証分析を行いたいと考える人たちにとっても,とても有用な本ではないでしょうか。因果関係を識別するための考え方なども詳しい解説があります。ここを手掛かりに,さらに文献をたぐって学んでいくこともできるように思います。
最後に,本書の自然災害と自殺の章で提示されている分析によると,大災害の後直後は自殺率が低下するものの,数年後からまた自殺率が上昇する傾向が導かれています。東日本大震災から数年が経過し,日本の被災地での自殺対策はどうでしょうか。心配されるところですし,実証的な知見を道しるべに,望ましい政策が実施されていくことを強く望みます。
個人の心理的要因,精神医療やカウンセリングなどの対応以外に,それを防ぐためにどのような社会環境を整えるべきなのか,という視点です。
本書では,通常の自殺対策本とは一線を画し,経済学や政治学という社会科学の視点から,ある目的(ここでは自殺対策ですが)を目指して検討される政策が「本当に有効なのか」「目的に沿った効果を生んでいるのか」「意図せざる不都合な結果はないか」等々について,実際のデータを分析することで検証しながら望ましい政策を探っている点です。また,原因分析についても印象的な議論ではなく,しっかりと事実に耳を傾けて,自殺の本当の要因を考え,導いている点も重要です。
実証分析の作法というか,どのような仮説とリサーチデザインを立て,ある事象を引き起こす原因やメカニズムを分析し,望ましい対応を考えるという,社会科学の実証分析の基本的な考え方がとてもクリアに描かれていて,今後実証分析を行いたいと考える人たちにとっても,とても有用な本ではないでしょうか。因果関係を識別するための考え方なども詳しい解説があります。ここを手掛かりに,さらに文献をたぐって学んでいくこともできるように思います。
最後に,本書の自然災害と自殺の章で提示されている分析によると,大災害の後直後は自殺率が低下するものの,数年後からまた自殺率が上昇する傾向が導かれています。東日本大震災から数年が経過し,日本の被災地での自殺対策はどうでしょうか。心配されるところですし,実証的な知見を道しるべに,望ましい政策が実施されていくことを強く望みます。