競争の作法 いかに働き、投資するか (ちくま新書) の感想

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タイトル競争の作法 いかに働き、投資するか (ちくま新書)
発売日販売日未定
製作者齊藤 誠
販売元筑摩書房
JANコード9784480065513
カテゴリジャンル別 » ビジネス・経済 » 経済学・経済事情 » 経済学

購入者の感想

タイトルとは異なり、前半半分以上を主に90年代以降の日本経済の認識確認に割いている。実証の経済学者らしく、GDP・失業・株価・為替のデータを丁寧に追ってゆくことで00年代の「戦後最長の景気回復」が"バブル"に過ぎなかったことを丁寧に解説する。論点そのものは単純で、円の実質実効為替レートがこの期間2割程度割安だったため、この期間の日本製品の対外競争力が2割ゲタをはいた状態であったということ。本来、国内の生産性を2割高めなければならないことを意味している。

にもかかわらず、株主も経営者も地主も(不動産価格の話もあるので)、そして個人ベースでも競争と真正面から向き合おうとしなかったことが、その後の閉塞感の原因と見る。典型的なのは、リーマンショックすら、08年以降の経済の落ち込みと「関係ない」と断言していること。

巷間、印象で語られることを丁寧に統計数字に基づいて紐解いてゆく手法は、実証経済学者としての誠実さを感じる。リーマンショックが日本経済の落ち込みと「関係ない」というのも、ラディカルだが本書の主旨を踏まえれば間違いではない。

一方、そのような経済状態に対する処方箋と言う意味では、啓蒙書ではあるけれども、フィージビリティの言及には不満が残る。著者も述べるように「個々人のモラルに訴えて社会問題を解決しようとするアプローチは、社会科学者として禁じて」である。にもかかわらず、「一人一人が真正面から競争と向き合っていくこと」「株主や地主など、持てる者が当然の責任を果たしていく」「塩漬けされていた労働や資本を解き放ち、人々の豊かな活動に充てていく」というのは、まさにモラルの問題なのではないか。

語り口がエッセイ調なのもあるが、読後感は経済学の本と言うよりも、自己啓発本(読んだことないけど)に近いように思う。その意味で読みやすい新書の形態は正解で、経済学者が一般向けに書いた本として成功していると思います。

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