あしたから出版社 (就職しないで生きるには21) の感想

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タイトルあしたから出版社 (就職しないで生きるには21)
発売日販売日未定
製作者島田 潤一郎
販売元晶文社
JANコード9784794968517
カテゴリジャンル別 » 人文・思想 » 本・図書館 » 本・書誌学

購入者の感想

冒頭の文章に、これは自分と同じ成分をもった人が書いたものだと感じてしまった。
素敵というわけではないけれど、ぐさぐさ響いたので引用したい。

「とても生きにくい世の中だと思う。
どうしてそうなったかのかわからないが、ずっと、生きにくいなあ、と思っている。
特にぼくのように若いころにちゃんと働いてこなかった人間にとって、社会は全然やさしくない。
『反省しました。もう馬鹿なことはやりません』と謝っても、許してはくれない。
あなたが好きでやってきたんでしょ? 責任とりなさいよ。
ずっとそう言われ続ける。
すくなくとも、そういわれ続けている気がする。」

本書は30歳をすぎるまで、アルバイトや派遣社員を転々としてきた筆者が
従兄の死をきっかけに、ひとりで出版社を立ち上げ、大いに奮闘する様子を書き綴ったもの。

そう書くと、起業家ノウハウを伝えるビジネス書のようだけど、全然違う。
みんなと同じ働き方ができなかった筆者の葛藤や心境の変化を淡々と綴っている。

読み進めれば、筆者はもともと本が好きで、書店が好き。
むしろ、「この仕事しかなかったんじゃないか」と思えるし、
いい働き方にたどりついたのでは感じる。

現実的な生活はかなり苦しいよう(月の手取りは8万円代と書いてあったし)だけど、
それでも、1冊の本作りに奮闘するなかで
「生きづらさ」から開放されていくような感覚が伝わってくる。

晶文社の「就職しないで生きるには」シリーズは好きで、
レイモンド・マンゴーのもの、「ぼくは本屋のおやじさん」も読んだ。
会社生活に馴染めない僕にとっては、脱・会社員の気分を盛り上げてしまい困るのだけど、
自分の思う働き方を考えるうえでは、
先人がいてくれることのありがたさを実感する。

 夏葉社の本に出会ったのは、行きつけの町の本屋。
その本屋は独立系の、いわゆる「町の本屋」であるけれども、いつもキラリと光る選書をしている。
その本屋の文芸書新刊台の目立つ位置に、夏葉社の新刊はいつもとっておきという感じに並べられているのだ。
 
 本書はその夏葉社の創業者にしてたった一人の社員である編集者、島田潤一郎さんの自伝的書籍。
「就職しないで」というより「就職できなかった」と語る島田さんと、島田さんの起こした夏葉社。
その今日までの道のりは決して穏やかではないけれども、厳しさばかりではない。
それは島田さんが、人との出逢いと、なにより本作りという仕事を心から愛しているからだろう。
 
 読んでいると島田さんがなんだか宮沢賢治の童話か何かの主人公のように思えてくる。
純粋一途で、感激屋。思い込んだら一直線。少し周りをハラハラさせ(想像です)、素直で、どこかとぼけている。
お金には常に苦労している。でも、想いを本というカタチにして届けることができればもう、それだけで良い。
そんな島田さんの人柄や想いが、手がけた本にはにじみ出ているから、本屋はその想いを、
誰かに届いて欲しいと願わずにはいられないのではないだろうか。
 
 数多ある起業本や前向き自己啓発本とはおよそ遠いところにある本だけれど、迷える青年達にはとても身近に思える本だと思う。
何度女性にフラれても、何度不採用通知をくらっても、今、好きなもののために動く、働く。その姿に勇気をもらった。

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