忠臣藏とは何か (講談社文芸文庫) の感想

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タイトル忠臣藏とは何か (講談社文芸文庫)
発売日販売日未定
製作者丸谷 才一
販売元講談社
JANコード9784061960138
カテゴリ古典 » 日本の古典 » 近世文学 » その他の近世文学

購入者の感想

 赤穂浪士の討ち入りは、数百年も先立つ鎌倉は曽我兄弟の仇討の物語が祖形だった。赤穂藩の浪士たちはいわばその物語を無意識のうちにお手本として足かけ3年の復讐劇を敢行した。しかも、江戸期の町人がこの復讐劇に夢中になったのは、曽我兄弟にとって源頼朝が体制そのものだったのと同様、自分たちには幕府(当時でいえば綱吉)こそ手も足も出ない盤石のもので、赤穂浪士たちはそれに刃向って自裁する運命を選んだ。そこには御霊信仰、さらにはカーニバルを思わせるダイナミズムがある――。

 自在闊達なエッセイ集を多数遺した丸谷さんの、油が乗り切ったころの文芸評論といったところ。できる限りの史資料をかき集め、分からないところは文学者らしい想像力でカバーし、それなりに首尾一貫した「虚構の物語」を鮮やかなレトリックで連綿と説き起こしている。他のエッセイ集にみられる「遊び」の要素は控え気味で、それでいて断定したいところは断定し、不明な部分は不明と述べるなど、緩急の味は「丸谷エッセイ」さながらの持ち味を残している。

 あくまでも文芸評論として、楽しく読む通すことができた。

発表当時、忠臣蔵に関する画期的な本として評判になった本の文庫化、現在でも忠臣蔵に関するエッセイ本としての価値は減っていない、司馬遼太郎のエッセイと双子のような「〜に違いない史観」本であり学術論文ではない、あくまでも文芸評論家による評論です、司馬が常に売り上げを意識した敷居の低い文体を心がけていたのに対し、旧かな旧字まじりの硬い文体は読者を選ぶとともに「読めるものだけ読んでみろ」的な読者に挑戦的な姿勢も感じる、

忠臣蔵とは何か、との表題に対し著者は忠臣蔵は反体制劇だったといいたいらしいのだが、たしかにその面はあるとおもうが、全編を読み通しても何かすっきりしない、かゆいところに手が届かない、奥歯にものがはさまったまま、と陳腐な表現が逆にぴたりとこの本に当てはまる、

例えば数百年後の評論家が「踊る大捜査線」の魅力を分析して、行き過ぎた官僚主義が跋扈した20世紀末の日本で官僚主義打倒を夢見る国民から圧倒的な支持を受けた刑事ドラマであり、主人公の名せりふ「事件は現場で起きてるんだ!」は、元禄忠臣蔵の大石の名せりふ「長い年月待ちましたのう」に匹敵すると現在はみなされている、などと書いていそうな状況を想像させるからです、

そこで思うわけです、こりゃ設問自体が変なのだと、

忠臣蔵といえば「仮名手本忠臣蔵」、人によっては「元禄忠臣蔵」、ある人には大仏次郎の「赤穂浪士」、また別な人にとっては史実としての赤穂藩断絶事件、市川中車が吉良上野介を演じた映画を思い出す人もいるでしょう、

著者の頭の中ではそれらすべての上位に「忠臣蔵」という抽象的な概念のようなものがある、と仮定されているようなのだ、私はこれを混乱と考えるが著者の頭の中では混乱は混乱のまま放置されながらも筆はどんどん進むというきわめて「文学的」な作品になっているわけです、第1行目、徳富蘇峰と芥川の会話から混乱が始まるのは逆に用意周到なのかもしれない、

したがって忠臣蔵とはまことに得体の知れない実に不可解なものであることが逆に博覧強記によって証明されていると考えます、

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