私のマルクス (文春文庫) の感想

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参照データ

タイトル私のマルクス (文春文庫)
発売日2010-11-10
製作者佐藤 優
販売元文藝春秋
JANコード9784167802011
カテゴリ »  » ジャンル別 » ノンフィクション

購入者の感想

もともと母親の影響でプロテスタント系のクリスチャンであった著書の佐藤さんは同志社大学神学部時代に無神論を勉強し、19歳で洗礼を受けました。

本書では、正に鬼才の元ロシア外交官で現在、起訴休職外務省事務官の佐藤さんの、主として同志社神学部時代の回想が、1.神学、2.神学に大きく影響するマルクス(の資本論)、3.少なからず巻き込まれる学生運動、を中心になされています。

超人的記憶力を持つ佐藤さんは、会話形式で回想しますが、同志社の神学部を中心とした仲間、教授・教諭達との会話に私は強く引き込まれました。

会話からそれぞれの登場人物の人となり・思想が浮き彫りにされ、とてもドラマチックであり、会話の内容に知的な刺激を受けるだけでなく、例えば直木賞作家東野圭吾氏の最近の佳作達よりも小説的な魅力を感じました。

表立って言葉には出てきませんが、本書に登場する人達は佐藤さんも含めて世の平和なり、社会的弱者を労わる社会を夢見て奮闘(生きて)しているように思います。

マルクスの資本論における資本主義の内在的論理とは何か。またマルクスの資本論と社会主義、マルクスの資本論と現在の金融資本の帝国主義時代との関係とは何かについて少しでも興味を惹かれる方、既に佐藤さんの著書に惹かれている方、同志社大学にゆかりのある方には、ご一読を強く勧めます。

 昨年末に「獄中記」を読んで以来 この一年は佐藤の本が出る度に すぐ買う日々が続いた。本書もその流れで購入し 一気に読み終えた。

 考えれば考えるほど 佐藤という人は 今の日本の言論界では突出した人である。僕の狭い知見で見る限り 佐藤に対する表立った批判は殆ど無く 完全に時代の寵児である。
 佐藤のような経歴と はっきりした物言いを考えてみると 幾らでも反論異論の余地があるような気がするのだが それが出てきていない。

 やはり 佐藤の経歴に圧倒されてしまうのだと思う。神学科でキリスト教を学んだ後に外務省にノンキャリアで入省し ソ連崩壊のモスクワで人脈を駆使し 帰国後は 鈴木宗男と北方領土に取り組み、鈴木宗男の失脚と同時に「国策捜査」にて入獄し 512日もの牢獄生活を 膨大な読書で過ごし 保釈後は 次々と著作を世に問う。敢えて 長く一文で書き出してみたが こんな経歴の方は 最近では他には見たことがない。
 特に 牢獄生活を強いられた知識人などは ここ30年程度余り無かった話だ。佐藤に批判異論がある人も 相手が かような獄中期間に 検察と対峙しつつ 悠々と 哲学や宗教を耽読してきたという部分だけで 位負けしてしまっているのではないかと思うことすらある。

 本書は佐藤の「青春期」である。相変わらず キリスト教には疎い僕には 知らない人名も多い。但し これを読むことで ようやく佐藤の「獄中記」の背景が見えた気がした。というか 獄中で行ってきた読書や思索は 佐藤の大学時代の生活の延長にあったことがはっきり分かった気がした。彼は獄に入ったことで読書家・思索家になったわけではなく 読書家・思索家が 獄に入っただけの事なのだ。

 しかし 凄い方である。

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