〈盗作〉の文学史 の感想

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参照データ

タイトル〈盗作〉の文学史
発売日販売日未定
製作者栗原 裕一郎
販売元新曜社
JANコード9784788511095
カテゴリジャンル別 » 人文・思想 » 本・図書館 » 著作権

購入者の感想

日本における盗作騒動をまとめた本。概要は以下のとおり。

 ・検証の対象となっているのは小説を中心とした文芸作品
 ・明治期〜2008年頃までの盗作事件を紹介
 ・特にページを割かれているのは,庄司薫,大藪春彦,山崎豊子,田口ランディなど
 ・出典,資料がかなり律儀に紹介されており,読者の調査の役にも立つ
 ・巻末に「人名・書名・メディア索引」「事項索引」「盗作事件年表」が付されていて,自分の気になる作家や評論家が,盗作事件にどのように関わっているのかがすぐに分かる

特に注目すべきは,「盗作」に対する著者のアプローチだろう。「まえがき」には次の一文がある。

 ・本書では基本的に,何かしら議論や波紋を呼んだものを盗作事件と考えている。(p.13)

「盗作」を論じるに際しては,何がそれに当たるかをまず明らかにしなければならないが,実のところこれは非常に難しい。そこで本書は視点を変えて,「盗作」ではなく「事件」に焦点を当てた。規範的評価から距離をとることで,幅広い資料の収集・開示が可能となったともいえる。たとえば,倉橋由美子の件(pp.63-)など,モラルの問題というよりも,むしろ審美的な議論と見た方がしっくりとくる。

かといって許される「引用」か否かにつき,本書が全く無自覚というわけではない。立松和平の件(pp.263-)について,立松の断筆を迫った日垣隆と,『産経新聞』の匿名コラムの見解を併記して,後者を「妥当」と評したり(p.272),あるいはまた,井伏鱒二『黒い雨』をめぐる騒動(pp.282-)について,「松本鶴雄の総括がなかではいちばん中立的かつ客観的」と評したりしているからである(p.307)。だが最終的な当否の判断は読者に委ねられているようで,だからこの本は全体的に,かなり引用の多い本になっている。

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