パーソナルネットワーク―人のつながりがもたらすもの (ワードマップ) の感想

社会学で扱ってきた「人間関係」が、インターネットによって研究対象となり、数学・情報科学の進展をもたらしています。
本書は、前半ではグラフ理論等の数学的アプローチ、後半では社会学的アプローチを紹介しています。
かなり平易に書いてありますから、数学の前提知識は不要です。
各章の導入話は面白くて、漫画ONE PIECEの場面を引用していたりと、サービス精神旺盛です。
さらに、単なる知識紹介にとどまらず、専門化してタコツボ化している研究者への警鐘も鳴らしています。
著者は「プログラムを書きツールも作り、解析もし、文章も書き、専門家のみならず、広く社会一般へ発信もできる研究者」を目指せ、と述べています。確かにこれからの社会科学者には、これくらいの能力は必要かもしれません。どんな社会科学も、インターネットを避けては通れませんので。
著者の発想が少々奇抜な感じですが、文章はとても読みやすい。情報系あるいは社会科学系の学生の独学にもいい。お勧めです。

「パーソナルネットワーク」というタイトルだが、世の中に出回っている「パーソナルネットワーク」にかんする書籍とかなり質が異なる。どちらかというと、ネットワーク論からみた人間関係について言及した書籍である。第1章は、専門的な話が多く、著者の前著「ネットワーク分析」を読んでいるか、グラフ理論の基礎を知らなければ理解が難しいだろう。ネットワーク論の話から外れる第4章は、議論の踏み込みが少なく、感想や意見の羅列に近い。そういった意味で書籍のまとまりに若干欠ける印象を受けた。ネットワーク研究者の立場と社会学者としての立場のどちらも取り入れようとした結果、却って、趣旨が散漫になっている感じがする。