海辺のカフカ (上) (新潮文庫) の感想

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参照データ

タイトル海辺のカフカ (上) (新潮文庫)
発売日販売日未定
製作者村上 春樹
販売元新潮社
JANコード9784101001548
カテゴリ文学・評論 » 文芸作品 » 日本文学 » ま行の著者

購入者の感想

本屋さんで平積みしている人気作家の作品だからって、万人受けするとは限らない。村上春樹をよく読みこんでいる人の間でさえ、本作は毀誉褒貶が定まらない。だから春樹デビューをしたい人は、まず図書館などで借りて下読みしてから注文されることをお勧めする。 本作は村上作品の中でも特殊な文体で進行するし(カフカくんの章)、ナカタさんの章は童話的にほのぼのしていてホッとするからって油断して読み進んで行くととんでもない場面に出くわすのだ。コケると最後までたどり着けない。

物語の主人公カフカくんの自己制御力は15歳という年齢設定からすれば異常とも思えるほどだが、清潔を保つ習慣や体作りを怠らないこと、栄養バランスの取れた美しい食べ物を好み、孤独を孤独と思わず、クラシック音楽や古い文学作品を愛する教養などは、どれも作者・村上春樹氏の美意識に適っていることばかりである。逆に正反対ともいえる星野青年の造詣こそが、作者のプロとしての力の現れとも思える。

村上春樹の世界観を「分からない」と思える感覚はある意味で正常だと思う。この暗さ、救いの見えないやりきれなさ、痛みを万人が意識し出し肯定するような世界は異常である。恐らく春樹読者の半数くらいはあんまり面白いとは思っていないのではないだろうか。
村上春樹がいくらノーベル賞候補の聞こえの高い人気作家であっても、彼に引きずられて孤独を自覚する人が増えるよりは、素直に「分かりません、好きじゃありません」と言える人が増えたほうが健全である。ハマればのめりこむのは必須だが(私のように)。

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