シリアル・イノベーター 「非シリコンバレー型」イノベーションの流儀 の感想

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参照データ

タイトルシリアル・イノベーター 「非シリコンバレー型」イノベーションの流儀
発売日販売日未定
製作者アビー・グリフィン、レイモンド・L・プライス、ブルース・A・ボジャック
販売元プレジデント社
JANコード9784833420808
カテゴリ » ジャンル別 » ビジネス・経済 » オペレーションズ

購入者の感想

シリコンバレーで成功した起業家ではなく、企業内で大きく成功を収めた商品・サービスを複数生み出した「シリアル・イノベーター」への精力的なインタビューからの示唆をまとめた書。

イノベーション創造のプロセスやイノベーター人材特性だけではなく、企業内での振舞い方(4章)、イノベーター人材の発掘・育成(6章)、マネジメント(7章)まで射程に入れているところが素晴らしい。イノベーション系の本を読み慣れている方にとっても、この辺りは得るところが多いことと思う。

本書は、シリアルイノベーターを、技術開発者であり、チャンピオン(ビジネスプロデューサーのようなイメージ)、製品開発者(プロジェクトマネージャーのイメージ)の全てを兼ね備えた人であると説く。そして彼らは、通常ラインとは異なるマネジメントをしなければいけない、と説く。この議論に全く異論はなく、膝を打つことばかり。

そうそう、と思った後にふと思うことがある。これって、シリコンバレーの起業家よりもスーパーマンで、見つけるのが難しいのでは?

自分が信じる社会正義と組織の論理を擦り合わせ、社内政治すらも身につけて、課題発見も、事業としての読みも、プロジェクトマネジメントも全部やっちゃう、そんな人からでないと、企業内からブレイクスルー・イノベーションが起こらないとしたら、もうそれは、宝くじを当てに行くような絶望的な確率と言わざるを得ない。実際、本書でもシリアルイノベーターは非常にレア(とくに大企業において)と、再三に渡って述べている。

逆にいえば、米国企業における最新研究ですら、企業内のイノベーションは天才頼みから抜け切れていないというのは、日本企業にとって希望でもある。社内の技術開発者、チャンピオン、製品開発者を有機的に組み合わせ続け、その中からシリアルにイノベーションを産む「組織としての仕掛け」ができれば、世界の企業に先駆けることができよう。

企業内でのイノベーションを理解し、それをマネジメントするという未踏の領域に挑戦したい人々にお勧めします。

ざくっと読みました。オススメです。
なぜオススメか。読後に「延々とうならされ、考えさせられる」本だからです。今でも私はうなりつづけています。

経営学とりわけ組織論では、個人レベルでの能力差はなく凡人同士が集まっていかにして活動のクオリティを高めていくかという流れで議論が進みます。そのような前提ですと自然と「組織」に焦点を当てざるをえないからです。

この本では、個人の能力差を前提にしています。しかも圧倒的な差です。いわゆる企業に「スター」もしくは「金の卵」がいて、彼ら・彼女らが腐らないようにするのが「組織」であるという関係になります。このような組織観でマネジメントの体系を再構築してみるのは大変面白いし、そのような組織観でこの本は描かれています。この前提と世界観が受け入れられない方は、読後にうならされるでしょう。この本はかなりしっかりとした調査に基づいているだけにかなりの説得力をもって迫って来ます。

この本の前提や世界観を受け入れられた方は、従来の経営学や組織論とこの本の関係にうならされるでしょう(私はこちらでうなっています)。これまでの経営学の組織観とはかけ離れているのですが、完全な断絶ではなく、読み手に相当な力量が必要なわけで考え抜けば、いずれは接続すると考えられます。
 特に、人材育成と組織、学習と組織の議論に関する知識と理解を積み重ねていけば、組織の中で単なる横並びの「多様性」を超えたいわゆる「できるやつ」と「できないやつ」という個々人の能力差が生まれている組織のマネジメントの議論が必要になるわけですし、そこまで進めばこの本の内容は接続できるのではないかと感じています。

つまり、みなさんの経営学の思考の幅を広げるにピッタリの本だと思います。みなさんにもうなって欲しいと思います。

「シリアル・イノベーター」とは、重要な課題を解決するアイデアを思いつき、その実現に欠かせない新技術を開発し、企業内の煩雑な手続きを突破し、画期的な製品やサービスとして市場に送り出す、この過程を何度も繰り返せる人材のことだ。

「ビジョナリー・カンパニー」で取り上げられた模範例が数年後には業績不振に陥るなど、ビジネス書は評判となっても再現性に疑問符がつく。しかしそれでも、本書は一読の甲斐があると思う。もちろん、シリアル・イノベーターは複数回イノベーションを起こした人たちではるものの、また再現できるかは数年後再検証する必要があるだろう。

ルーチン的な仕事や、技術中心イノベーションや、持続的イノベーション、そして何より、それらに携わっている人たちを否定していない。会社を持続させていけるのは彼らの貢献あってこそだからだ。えてしてイノベーションは一人の天才で説明されがちだが、本書はシリアル・イノベーターを鍵としつつも、彼らを支える周りの環境の大切さを忘れない。この態度は大企業内でイノベーションを起こすときには必須だろう。そして、複雑なブレークスルー製品を考えだして発売するのは、新興企業では難しく、成熟した大企業がその役割を担うことが多いと言われることを考えると、日本全体、世界全体でイノベーションを起こしていく上で必須となる態度とも言える。

本書では、シリアル・イノベーターと特性についても詳細に記述されているのだが、正直、スーパーマン過ぎて常人には無理だと感じさせられる。曰く、長い時間をかけて課題を理解する、技術的にも科学的原理から深く洞察する、顧客だけでなく市場についても深く理解する、人望があり初期から社内の非公式な協力を取り付ける、社内政治を大切にし、プロジェクトとして承認させる、市場に届けられてしっかり売れるまで見届ける、そしてこれらが全て1人の人間の中に共存していなければならない。ただし、シリアル・イノベーターの支援をすることはできる。そしてその方法も書いてある。シリアル・イノベーションはおそらくチームスポーツであり、いろんなポジションで参加しうるのだろう。

シリアル・イノベーターの行動を参考に、自分のプロジェクトと付きあわせて読みなおして行きたい0

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