「失われた10年」の真実―実体経済と金融システムの相克 の感想

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タイトル「失われた10年」の真実―実体経済と金融システムの相克
発売日販売日未定
製作者小川 一夫
販売元東洋経済新報社
JANコード9784492395127
カテゴリ »  » ジャンル別 » ビジネス・経済

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著者はバブル崩壊後の時期の金融・実物経済について考察する前提として、高度成長期及びバブル期の銀行・企業行動について、実証的な検討を行いつつ、モデルによる説明を試みる。したがって、回帰分析やマクロ経済モデルの一定程度の理解が必要となるが、苦手な人であれば記述のみ読んでも理解できなくはないだろう。

高度成長期には、政府及び銀行は低金利政策をとることにより、重厚長大産業に重点的に融資を行うことが可能となり、これが日本経済の急激な発展につながった。この時代に確立した護送船団方式によれば、破綻した金融機関は別の金融機関により合併・救済される(救済する側も店舗数の拡大などメリットがあったのである。)。

貿易黒字に伴う対外純資産の蓄積により、金融の国際化・自由化の圧力が高まり、都市商業地の地価が高騰するとともに、資金調達の手段が多様化した大企業は資本市場から直接資金を調達するようになった。貸出先の新規開拓を迫られた金融機関は、不動産関連産業や家計への貸出を増やしていった。

不動産融資規制によりバブルが終焉すると、金融機関の貸出債権が不良化することとなる。不良債権が増えると、なぜ経済が収縮するのか。ひとつには、銀行の自己資本が毀損されることにより、貸出及び債権需要が減少し、債権金利が上昇する。これが設備投資の減少をもたらす。もうひとつは、貸出の減少により資金制約に陥った企業や家計が設備投資や消費を減らす。さらには、企業や家計の観点から見れば、不良債権は過剰債務であるため、資産効果で支出を抑えるため、さらに収縮することとなる。

こうした状況が長引いた原因として、著者は、高度成長期に形成された金融行政(護送船団方式)に代わる新たな破綻ルールを策定するまでに8年近くの歳月を要したことが「失われた10年」の最大要因であったと指摘する。したがって、ゼロ金利政策や量的緩和政策といった金融政策よりも、「金融再生プログラム」による不良債権比率の減少が、経済回復の原因であったと主張する。

決して読みやすいとは言えないが、マクロ経済学の枠組みを使って日本の戦後経済を理解する上では手堅くまとめられていると思う。

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