人間そっくり (新潮文庫) の感想

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参照データ

タイトル人間そっくり (新潮文庫)
発売日販売日未定
製作者安部 公房
販売元新潮社
JANコード9784101121123
カテゴリ »  » ジャンル別 » 文学・評論

購入者の感想

筒井康隆氏の「SF入門」的な本で知り、夢中で読んだのが遠い昔の小学校高学年。
頭がクラクラする台詞のやり取りに酔い、ラストでパンチを喰らわされ、いやはや大変な作品です。
「炭酸水を飲みすぎたような、不随意筋的な苦い笑い」
「ベッドの下に藪蚊が巣をつくったみたいな、嫌な気分」
「心臓を塩漬けにされたような、ひりひりした気分」
など独特の比喩表現を味わうのもこの本の(あるいは安部公房氏の)楽しみ方のひとつです。
他の氏の作品に比べ読みやすく(殆ど会話ということもあるでしょうし)、短いのでまずはお勧めです。

人間か火星人か、健常者か狂人か、ある日突然ラジオ放送作家の元に訪れた自称火星人のその男、そんな男のなんとも奇妙なキャラクターと話術の術中にハマり、読者もろとも主人公の正気に不純物でも流し込んだような形で、「あれ?」っという間にあるはずのないことが、あり得てきそうな不陰気を漂わす。たかだか170ページの会話文と処々の状況説明だけで、ここまで異次元を描けちゃう安部氏は、日常どんなのこと考えながら生活していたのかと強い疑問を起こさせます。ちなみにあの調子であと2冊ぐらい続編を書かれていたら、読み終えて正気を保っていられるか自信薄いです(ちょっと大げさか)。登場人物わずか4人、その他電話の声のみで登場する男が一人。そして基本的に回想以外のシーンは全てマンションかアパートのような所の一室にのみ限定されている。またいかにもSF的な化学薬品や奇妙なマシンの登場もなく、単に話術のみで強烈にSFの高みに達してしまうとは、いやはやホンモノの達人です。この小説もそうだが、安部公房という人自体が、何に対しても何処まで本気なのか、真剣なのか、まったく解せず、その存在その物が殆どアートです。

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新潮社から発売された安部 公房の人間そっくり (新潮文庫)(JAN:9784101121123)の感想と評価
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