流星ワゴン (講談社文庫) の感想

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参照データ

タイトル流星ワゴン (講談社文庫)
発売日販売日未定
製作者重松 清
販売元講談社
JANコード9784062749985
カテゴリ文学・評論 » 文芸作品 » 日本文学 » さ行の著者

流星ワゴン (講談社文庫) とは

   主人公の永田一雄の前に、1台のワゴン車が止まったことからこの物語は始まる。ワゴン車には橋本義明・健太親子が乗っており、彼らはなぜか永田の抱えている問題をよく知っていた。

   永田の家庭は崩壊寸前。妻の美代子はテレクラで男と不倫を重ね、息子の広樹は中学受験に失敗し家庭内暴力をふるう。永田自身も会社からリストラされ、小遣いほしさに、ガンで余命いくばくもない父親を訪ねていくようになっていた。「死にたい」と漠然と考えていたとき、永田は橋本親子に出会ったのだ。橋本は彼に、自分たちは死者だと告げると、「たいせつな場所」へ連れて行くといった。そして、まるでタイムマシーンのように、永田を過去へといざなう。

   小説の設定は、冒頭から荒唐無稽である。幽霊がクルマを運転し、主人公たちと会話する。ワゴン車は過去と現在とを自由に往来できるし、死に際の父親が主人公と同年齢で登場し、ともに行動したりするのだ。

   過去にさかのぼるたびに、永田は美代子や広樹がつまづいてしまったきっかけを知ることになる。何とかしなければと思いながらも、2人にうまく救いの手を差し伸べられない永田。小説の非現実的な設定と比べて、永田と家族のすれ違いと衝突の様子は、いたくシビアで生々しい。

   永田は時空を越えて、苦しみながらも毅然と家族の問題解決に体当たりしていく。その結果はけっきょくのところ、家族が置かれた状況のささいな改善にとどまるだけでしかない。それでも死にたがっていた男は、その現実をしっかりと認識し生きていこうとする。「僕たちはここから始めるしかない」という言葉を胸に刻んで。(文月 達)

購入者の感想

読み終えて、母と子はよくあっても、父と子の愛情をここまで描く作品ってあまりないんじゃないかと思った。落ち込んでいる人、今しんどい人にとって、前向きになり、元気がもらえる本。

重松清の最新長編小説で、読み始める前から期待しながら読みましたが、見事期待にこたえてくれる作品でした。家族のバラバラな絆とそれぞれ抱えるもの、それを知る主人公の思い……と、前編に登場人物が抱える切なさと家族に対する愛情が見事に描かれ、重松作品らしさが全編に出ています。

この本を読んで考えさせられたことは、

・ 過去に戻っても現実は変えられない。現実と向き合うことが大事。
  ※ もちろん、現実社会で過去に戻ることはできませんが、過去をあれこれ振り返るより「今」が大事だということ。

・ 父親とわだかりを持ったまま、親離れし、未だに父親が好きになれないという方も多いと思いますが、自分が子供を持ち、父親となり、そういう立場になったときは、父親のことが理解できるのか。それでもやはり理解はできないのか。また、父親が自分と同じ年齢になって現れたら理解できるのか、できないのか。

・ 子供が思春期を迎えたときに親としてどう子供と接すればよいか。また、接し方に失敗した後のフォローはどうすればよいか。

ということです。

この小説では妻が病的なほどに浮気するようになるのですが、主人公の男性に落ち度らしいところが特にないと思いますし、また、たった1年で妻が激変するというのも考えづらかったです。また、妻との性描写が詳しすぎて、やや気になりました。

妻は不倫で家を空け、中学受験に失敗した息子は登校拒否から家庭内暴力へ、と崩壊した家庭を抱え、リストラで失業中の38歳の主人公「僕」。全て失い生きる望みを無くした深夜、駅前のベンチに座った僕の前にワインレッド色のオデッセイが止まる。ワゴンには交通事故で亡くなった親子が乗っており、「僕」を「僕」の大切な場所に連れて行く。やがてそのワゴン車に故郷で死に瀕しているはずの父親が、僕と同じ38歳の姿で同乗してくる・・・。
若い父と「僕」との奇妙な道行・・・。
どこで「僕」は人生を誤ったのか、いくつもの枝分かれした人生の選択の道をどうして選んできたのか・・・。ワゴンは時空を遡る。「僕」が遭遇した人生の岐路を追体験していく。
ワゴン車の運転手「橋本さん」と、8歳のこども「健太くん」によるサイドストーリーもまたよい。初めてのドライブで交通事故に合い、死んだ「健太くん」に死を自覚させて、なんとかして成仏させようと願う「橋本さん」。行き残ったはずの母親に会いたい「健太くん」・・・。
家族の物語、親子の物語、父親と「僕」、「僕」と息子、「橋本さん」と「健太くん」、夫婦の物語・・・。重松清がこれまでの作品の中で描いてきたテーマに通じるストーリーが展開する。大人のメルヘンと片付けるのは簡単。だがここに書かれたテーマは普遍的なものだ。
家族を抱えるひと、これから家庭を築く人、子どもがいるひと、これから子どもを設けるひと・・・ぜひ読んで欲しい。
家庭をもつ男なら自分の中にも、「僕」にどこか通じるところを見つけられると思う。父親への複雑な思い、妻への思い、子どもへの思い・・・。センチメンタルになるかもしれない。重松清は涙腺のツボを上手に押していくから・・・。ただ著者は決して甘い結末は用意しない。ラストも余韻深い・・。読むべし!

あの時なぜ気がつかなかったのだろう?あの時ああしていれば・・・。
人間はいつも後悔しながら生きていくのかもしれません。でも大切なのは、過去を変えることではなく、起こってしまった過去を見据えて、未来をどう生きるのかを考えることです。投げ出したらそこで終わってしまいます。橋本さん親子のワゴンは、死にたいと思っている人をあの世に連れて行くのではなく、乗せた人に生きる希望を与えてくれるワゴンなのです。親子・・・。心が離れているようでも、どこかでしっかりつながっているものなのですね。過去の出来事がよかったのか悪かったのか?それを決めるのは、私達が未来をどう生きていくのかにかかっています。起こってしまった過去はもう変えることが出来ません。でも、そこから出発する未来は数限りなくあります。親子とは?家族とは?そして生きるとは?この作品は様々なテーマを投げかけてきます。感動の1冊です。ぜひ読むことをおすすめします。

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