「男の娘」たち の感想

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タイトル「男の娘」たち
発売日販売日未定
製作者川本 直
販売元河出書房新社
JANコード9784309246741
カテゴリ »  » ジャンル別 » 人文・思想

購入者の感想

本書は従来の縦割り型のジェンダーアイデンティティーに収まらない、複数形の「男の娘」たちを取り巻く状況を非常に真摯に追ったノンフィクションである。今後、社会学・ジェンダー論においてこの問題に対し考える際にも読まれることになるだろう。

特に(恐らく当事者たちにも不透明な部分のあるだろう)女装シーンの内部断絶/分裂の様相がよく分かるのが興味深い。しかもそれが日本の倫理観と法律的・社会的価値観にも影響されて内面化されている、というのもわかる。
また、日本のジェンダー関連の状況の未整備が、より一層彼(女)たちを辺境ともいうべき領域へと追い詰めてきていたのがひしひしと分かる。

読んでいて興味深かったのは既成のジェンダー意識が追い付かないほどに多様なアイデンティティーの在り方で、当事者自身が抱えている内部分裂ともいえるーーあるいは自己嫌悪と他己嫌悪ともいいえるもの、それは単純に何らかのフォビアとカテゴライズ出来るものではない。

ただここにおいて気になるのは、ここに登場する「男の娘」たちには、埋没系も含め、男女ともストレートにしろLGBTQにしても、ある種の画一化されてしまった「美しさ」が前提のようになってしまっているかのように見えることだ。
例えば、ニューハーフではなくとも、美しくない男の娘が普通にいてもいいのではないだろうか。しかしどこかで多くの「男の娘」たちはその美しさにより近付いているが故に様々な人間を引き寄せる構造になってしまっている。

その点で、彼(女)たちのうちのかなりが記号的な存在である二次元のキャラクターの美しさに対する憧れを表明している点は検討に値するのではないか。

その背後には、男女両性において、実は多様な「美しさ」という概念を形作ることができなかった、日本社会の画一的なジェンダー認識に問題が潜在しているように思う。彼らは越境者であるために、かえってより強くその引力を引き受けてしまっているのではないか。「叶えられなかった」人びとをどれだけ幅広く受け入れ、その引力を分散できるか、それが今後の女装シーンの重要課題の一つのように思われてならない。

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