和声―理論と実習 (1) の感想

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参照データ

タイトル和声―理論と実習 (1)
発売日販売日未定
製作者島岡 譲
販売元音楽之友社
JANコード9784276102057
カテゴリエンターテイメント » 音楽 » 音楽理論・音楽論 » 音楽学・音楽教育学

購入者の感想

『新しい和声 ― 理論と聴感覚の統合』や『明解 和声法』が400ページとか440ページで説明していることを、この本では第Ⅰ巻~第Ⅲ巻+『総合和声』(分析篇と原理篇)の合計1100ページほどを使って説明します。最終的に第Ⅲ巻で14ページになる「公理」以外の規則はすべて、先生から習う時に先生が説明する「公理を守ったり、和音をきれいにつなげようとすると、結局こうなるよ」のようなコツとか玄人なら当然こうするよねみたいなものだと思います。

結果、実際に使う時にアレコレ悩まず、サクッと対応できますね。

とは言え、「結局こうなるよ」にたどり着くまでの「なんでそうするの?」という道筋はほとんど示されてはおらず、説明+譜例からその解明を行うことが本当の学習だと思います。

例えば、Ⅴ7→Ⅵの連結では「第3音は2度上行、他の音はⅥの構成音に下行、この際のⅥの3度は重複可」とただ覚えるのではなく、「第3音は導音(限定進行音)だから2度上行、第7音は限定進行音だから2度下行。ここまでは公理だから確定。第5音は2度上げればバスと平行5度になるし、5度上げればバスと並達8度になるから2度下げて第3音重複するしかない。第3音重複禁止は公理にないしね。配置によっては3度下げて根音にするのはありかなー」程度には掘り下げてみたり。

また、公理以外の細かな規則(絶対的な公理かどうかは巻末の『公理』を参照)を守っていると、どうしても美しい響き、美しい流れになってしまいます。第Ⅰ巻、第Ⅱ巻と進めるうちに、この美しい響きを強制的に長期間聞かされた結果、課題を書いた時にはわからなかった平行5度を聴いて気付くほどに順応化されてしまいます。結果、「理論と聴感覚の統合」が自力でできてしまいます。(当然、弾くなり、楽譜作成ソフトやシーケンサーに入力するなりして音を聴きながら進めるのは必須です。せっかくなので電子ピアノならベルクマイスターやキルンベルガーで、シーケンサーがHMTに対応しているならHMTを有効化しましょう)

『新しい和声 ― 理論と聴感覚の統合』など他の教科書はこの辺を先生が授業の中で対応することが前提の教科書です。(自分で弾いてみろとも書いてある)

和声の正しいつけ方、そして、和声全般について勉強していくとき、まず頭に浮かぶものに、和声学、いわゆる古典和声学という学問がある。この古典和声学というのは、古典的な意味での正しい和声のあり方がひとつのルールとして完成されたものだ。したがって、この古典和声学に従って忠実に和声をつけていくと、古典音楽として正しい和声の進行と音の列ができることになる。ここで気をつけてほしいのは、まず最初に古典和声学という和声の進行や音の進行のルールが先にあって、バッハやハイドン、モーツァルト、ベートーヴェンなどの古典音楽の巨匠たちは、そのルールにのっとって曲を書いたのではない、ということだ。それとは逆に、それらの巨匠たちの古典音楽がなぜ美しく聞こえるのか、なぜああいう風に響くのかということを、あとから分析してみたら、そのようなルールがあったという順序なのだ。要するに、古典和声学のルールというのは、いわゆるドイツ的な音を書くためのルールと理解すればよいだろう。皆さんが、古典和声学を勉強して、完全にそのルールにのっとって音楽を書くと、非常にドイツ的なクラシカルな音楽ができあがることになる。だが、皆さんが、この現代において、現代の歌、現代の音楽を作る場合、この古典和声学に完全にしばられる必要はない。むしろ、あまりに古典和声学のルール通りの音楽を作ると、現代の人の感性、および社会的な背景から遊離したものができあがるかもしれない。しかし、一方でこの古典和声学のルールというのは、音楽の美しさの普遍性を持っているものであるから、音楽の勉強の基礎、そして、ある程度の常識として、知っておく必要はあるわけだ。いってみれば、目立たない存在ではあっても、建築物の土台となる基礎工事のようなものだ。最終的にはその旋律に対し、どのような和声をつけていくかは、皆さん自身の感性が決めることだ。

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