どんな球を投げたら打たれないか (PHP新書) の感想

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作中著者は自分には野球の才能は無いが、イメージしたことをできる才能があったと言っているが、それこそ誰もが羨む野球の才能だと思う。

努力の天才と言うより天才の努力と言うべきか。

天才がここまで努力してるのだから、非凡な人間はもっと努力すべきと思わされる一冊。

技術論や投球論はアマチュアでも参考になると思う。

「すべてのボールをいかに、変化するぎりぎりのところまでストレートに見せるか」。
「バットに当てさせないと、変化球を投げる意味がない。大げさではなく、そう思っています」。

2014年シーズンに16勝5敗、防御率1.98で沢村賞を受賞した金子千尋投手の本。今や日本を代表する投手だが、高校のときには2年の春に甲子園に出場したものの超高校級とかではなく、社会人野球でも右ひじの怪我などで十分な実績を残すことができず、プロ入り1年目も怪我の影響で1軍で一度も投げられなかった。そんな中で「どうすれば、自分みたいなピッチャーが、プロの世界で勝てるようになるのか」という命題に向き合い、考え続け、新たな球種をひとつひとつ習得していったのだという。

この本で面白いのは「変化球の”変化”の定義は何か」ということへのこだわりである。「極論すれば、僕の場合は『変化しない変化球』を投げたいと思ったのです」とさえ、述べている。変化のバリエーションは限りなくある。大きな変化のボールはコントロールが難しいし、ストレートとの違いが打者にわかりやすい。突出したウィニングショットはいらない。むしろ、全ての変化球を、ストレートと同じフォームで投げ、ストレートと思わせ、100球以内で27人を打ち取る。そんな投球こそが理想なのだという。

球種の多い投手で、しかもスライダーだけとっても3種類あるというが、そのひとつひとつについて、握りの写真を添えて細かく解説している。元々投げていたカーブに加えて、パワーカーブ、さらには一番最近習得したパワーシンカーについても丁寧に説明している。こんなに秘密を語って大丈夫なのか、と思うほどだ。何人かの投手や打者の特徴についても感想を述べている。

力まずに投げることの重要性に改めて気づいたことで奪三振が増えたこと。野茂氏の貴重なアドバイス。低めへの意識。ローテーションの合間にはブルペンに入らない理由。アンダーシャツ問題、9回まで巨人をノーヒットに抑えた試合、CSで勝てなかった悔しさについても振り返っている。また、こんな凄い成績を挙げているのに「いろんなボールをあれこれ考えながら使って、やっと抑えることができる」という感覚なのだという。