名人は危うきに遊ぶ (新潮文庫) の感想

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参照データ

タイトル名人は危うきに遊ぶ (新潮文庫)
発売日販売日未定
製作者白洲 正子
販売元新潮社
JANコード9784101379067
カテゴリ文学・評論 » エッセー・随筆 » 日本のエッセー・随筆 » 近現代の作品

購入者の感想

冒頭の一文に圧倒された。
奈良へ行きたくなった。

東大寺の大仏殿は人々でにぎわっている。
が、もと講堂の建っていたあとは、ガランとした空間だ。
「何もないことの有難さ」
「南に大仏殿、北に正倉院をひかえた講堂跡の礎石の上に寝そべって、
空往く雲を眺めている時ほど豊かな気持ちにひたることはない」

「いま、わたしは、じぶんの魂と向きあっているのだ」

自分にも、かつてそんな時間が流れていたことを思い出した。
あやうく、忘れたまま棺桶にはいるところだった・・・。

 日頃、著者が親しんでいるもの。能や仏像、骨董、書画、和歌といった日本の伝統芸術から、庭の草木や花に寄せる思いを綴った随筆の数々。初出が昭和57年(1982年)のものから平成7年(1995年)のものまで、全部で38の文章が収められています。
 文章の品のあるたたずまい以上に、ぴんと背筋の張った著者の心意気や、ものの考え方に遊びのあるところ、融通無碍の自在さ、闊達さに惹かれました。ぴしりと言い放つ自己主張の強さが鼻につくところもありましたが、白洲正子という人間の品格がおのずと伝わってくる文章の力は、きっぱりしていて清々しいものでしたね。
 なかでも好ましく感じたのは、平成7年初出の三篇(「李朝の白壺」「はさみのあそび」「大人の文章」)と、異形の怖さにぞくりとさせられた「同行(どうぎょう)三人」、在原業平(ありわらのなりひら)の歌の味わい方が素敵だった「日本の伝統」、この五つの文章。ひとつだけ選ぶとしたら、「李朝の白壺」かな。口絵にある白壺「風花」のふっくらとしたやわらかみと、二頁四段の白洲正子の文章が融け合い、風のまにまに吹かれている趣が素晴らしい。掌篇ですが、間然するところのない名品。いい心持ちになりました。

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