木曜島の夜会 (文春文庫) の感想

アマゾンで購入する

参照データ

タイトル木曜島の夜会 (文春文庫)
発売日2011-08-04
製作者司馬 遼太郎
販売元文藝春秋
JANコード9784167663360
カテゴリ » ジャンル別 » 文学・評論 » 歴史・時代小説

購入者の感想

明治から昭和の初期まで、出稼ぎのためにオーストラリアの木曜島(Thursday Island)に赴いた男たちのドラマが描写される内容です。なぜ木曜島に出稼ぎの男たちが向かったのかというと、ここでは洋服製造業で必要なボタンの材料、貝殻が潤沢に採れるからなのですが、司馬遼太郎は自らこの木曜島に赴き、オーストラリアの大自然のなかで働いた男たちの様子を描きます。司馬が自ら体感した木曜島の自然の美しさ、それはまさに筆舌を尽くしがたいほどの美しさであったということです。しかし、出稼ぎ労働者たちにしてみれば自然の鑑賞のために木曜島まで出稼ぎに来ているわけでは当然ありませんので、むしろ島の生活のなかで感じられる厳しさが強調されることになるのです。なかには故郷に帰ることができずに木曜島に生活の根を下ろす人々も出てきます。司馬が木曜島で邂逅を果たしたひとりの老人、彼は島に根付いて家族ももち、島での人間関係も円滑に営みながらも、日本への憧憬を捨て去ることが結局できないで、さびしい感情を吐露します。司馬がその感情に接するとき、祖国への強い思いをはせて、遠い異国の地で暮らす日本人の感情が雄大な自然のなかに取り込まれて、一層切なさを増幅させてゆきます。あっという間に読了できてしまう内容ですし、複雑な内容でもありませんので、メッセージ性も強いわけではありませんが、透明な哀しさに触れて自分も木曜島に行ってみたい、そんな気持ちにさせられる本でした。

あなたの感想と評価

コメント欄

関連商品の価格と中古

木曜島の夜会 (文春文庫)

アマゾンで購入する
文藝春秋から発売された司馬 遼太郎の木曜島の夜会 (文春文庫)(JAN:9784167663360)の感想と評価
2017 - copyright© みんこみゅ - アマゾン商品の感想と評価 all rights reserved.