細菌と人類―終わりなき攻防の歴史 (中公文庫) の感想

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参照データ

タイトル細菌と人類―終わりなき攻防の歴史 (中公文庫)
発売日販売日未定
製作者ウィリー ハンセン
販売元中央公論新社
JANコード9784122050747
カテゴリジャンル別 » ノンフィクション » 科学 » 医学

購入者の感想

ペスト,コレラ,腸チフス,赤痢,淋病,ジフテリア,結核,梅毒,破傷風,炭疽病,ハンセン病など,さまざまな感染症の歴史がコンパクトにまとめられている。古くは異なる病気が同じものと見なされたり,その記録を探るのも困難があろう。

病気の歴史は,病気とのたたかいの歴史と同義だ。その解明と治療に向けて,多くの科学者の努力がある。必死に探る姿から,目の前の病人を救いたいという思いが伝わる。栄誉欲による探究のものもあるのだろうが,それを感じさせない献身的な取り組みがある。

ただその一方で,今から考えると人権を損なうような研究方法もある。また,多くの犠牲の上に,研究の成果があることも事実だろう。

いわれのない差別も,感染症には多くあった。特に,ハンセン病については,日本では2008年まで隔離政策が続いていた。はじめは未知のものに対する恐怖心から,それが徐々に固定化していく。現在でも,エイズなど新しい感染症に対する偏見はなくならない。また,新型インフルエンザに対する世の中の反応でも,そのようないわれのない差別が見え隠れしている。何と愚かなことだろうか。

また,これらの病原体を使った生物兵器の開発,実験が行われている。自らを犠牲にしてまでも,病気の解明や治療法の開発に力を注ぐものがいる一方で,その知識を使って人殺しを考えるものもいる。人類の醜い心とのたたかいは,特効薬がないだけに難しい。

間違ったことを繰り返さないためにも,過去の事実を知っておく必要がある。また,未知のものに対する過剰な反応を避けるためにも,過去の感染症の歴史と,それが起こるしくみ,さらに治療法などについて,知ることは大切だと思う。過去の知識があれば,新しい感染症に対しても,冷静に対応できるものと信じたい。

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