日本に住む英国人がイギリスに戻らない本当の理由 の感想

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イギリスびいきの井形さんにしては、珍しく冷静な内容で、しかも日本をほめている。
イギリス大絶賛では、すでに読者を引き付けられないのかもしれない。

前半は面白く読んだが、日本の公務員批判のところのリサーチはものすごく雑。
井形さんの中では、なぜか政治家も公務員も一緒。あれま。（編集者もここは意見しなくてはいけないのでは）

公務員を叩きたいのであれば、最低５人は取材すればよかったのに。
消防士についても、危険手当がどうのこうのと、聞きかじったことだけで判断するのはいかがなものか。

井形さんは、タイトルをつけることや、なんとなく社会が求めているイメージに本を仕上げる才能はあると思う。
だけど、絶対的にリサーチ不足で、じっくり考えて本を出すタイプの人ではないので、話半分ぐらいで付き合うのがちょうどいいと思う。

日本に住むイギリス人の目を通して描かれた日本の良さがとても新鮮だった。
褒めすぎではとの思いも、メニューや電池の話、日本のランドスケープのすごさを挙げられ、
言われてみて分かったことも多々あった。

井形さんがイギリスに住んだ後、自分を跳ねた運転手を訴よと英国の裁判所にいわれ、とまどう姿。
イギリス国教とイスラム教の折衝など、トピックのいくつかは実に面白かった。

日本人よ、という掛け声ばかりが耳に残る本が多い中
在日イギリス人や親日家の声を拾い、分析して、日本の暮らし良さとは何かを追及する。

すべてではないだろうが、自己責任や競争に消耗する欧米人が、
日本びいきになる気持ちは大いに共感できる。

気負わず、素直に、老後を日本でと告白した井形さんも評価できる。

そう、この本の魅力は、それぞれが建前でなく本音でイギリスと日本を語っている点。
鋭い生活目線がピリッと利いている。

イギリス人の本音を知る絶好の書。
個人的に今のイギリス人の老後の生き方は大変参考になった。