日本銀行 (ちくま新書) の感想

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タイトル日本銀行 (ちくま新書)
発売日販売日未定
製作者翁邦雄
販売元筑摩書房
JANコード9784480067272
カテゴリ » ジャンル別 » ビジネス・経済 » 経済学・経済事情

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物価安定と「最後の貸し手」という中央銀行の任務と行動について、17世紀のイングランド銀設立からアベノミクスの異次元緩和に至る歴史を振り返りつつ、分かりやすく解説している。昭和恐慌やジンバブエのように、お金に不信が生まれると社会は大混乱に陥ってしまう。金融システムは電気水道と同じくらい重要なインフラだ、と著者は言う。エピソードが豊富なのがいい。「ボリビアで鼻紙10枚が45万ペソで売られた。1万ペソ札で鼻をかむ方が安い」「ジンバブエでは食事の間に値段が2割上がるので、デザート前にスープ代を払う」とか。欧州中央銀行はインフレを恐れてきたという。一方、大恐慌で失業者を大量に出し大混乱に陥った米FRBはデフレも嫌い、グリーンスパンは物価上昇に積極的だった。

アベノミクスについては、「財政健全化がないまま物価上昇に入ると、債務危機になる」として、社会保障費の削減を中心にした出口戦略を求めている。リフレを支持する人は戦前の高橋財政を例に出すことが多いが、高橋財政も結局、高橋是清が暗殺されたことで、引き締め役がいなくなり、戦争に突入した。しかし本書を読むと、著者はデフレにも懸念を示し、短期的な財政規模の拡大には肯定的だ。また、速水総裁のゼロ金利解除を「性急だった」と評したり、クルーグマンがデフレ対策のために例えた、ベビーシッター組合のアイデアに1章割き、丁寧に説明している。

後半は金融政策という学問の範疇に立ち入っているのでやや難しいが、金融の失敗が引き起こした笑いと涙の歴史を描いた前半は楽しい。わかりやすく、きちんと議論を積み上げている。また、ベビーシッター組合の喩えが金融の抽象的な議論をうまく具体化できていて、参考になった。著者は「インフレを中央銀行は引き起こせない」という「日銀理論」の理論的支柱といわれている。リフレ論争で、著者の論が矢面に立つことが多く、「論争的な人なのかな」と思っていたが、本書を読んでイメージを改めた。過激な「バズーカ論者」を冒頭で戒めているものの、ほとんど対決的な記述ではない。中央銀行の役割を広く見渡せる好著だと思う。

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