ケインズとハイエク―貨幣と市場への問い (講談社現代新書) の感想

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参照データ

タイトルケインズとハイエク―貨幣と市場への問い (講談社現代新書)
発売日販売日未定
製作者松原 隆一郎
販売元講談社
JANコード9784062881302
カテゴリジャンル別 » ビジネス・経済 » 経済学・経済事情 » 経済学

購入者の感想

 ケインズとハイエクの議論は噛み合わなかった。かなり高度な所で。しかも、彼らはそれを認識していたのではないかとすら思える。

 彼らは、市場経済が好ましいと考える点では共通していた。「時と所についての特定の状況に関する断片的な知識」を有するだけの人びとが、自然に秩序を自生させられるための装置として市場を捉えたのがハイエクであれば、ケインズはそれを前提として議論を展開していた。

 ハイエクは自生的秩序の理屈により社会主義的計画経済を批判し、政府による経済へのあらゆる介入を批判する。一方で、ケインズは金融政策や財政政策による、経済への介入をためらわない。

 どうして、このような対立が生じるのか。著者は「ハイエクの自由論は平時の書」であり、「ケインズの自由論は危機の書」であると述べる。

 ハイエクの議論では、ほとんどバブルや金融危機が想定されていない。そもそも、自生的秩序さえ保たれていれば、そのようなことは起きず、政府が介入するからこそバブルや金融危機が起こるのだとさえ言いたそうにも感じられる。

 一方で、ケインズは市場経済を不安定なものとして捉えているから、危機の際には政府の介入の必要性を説く。

 現在の日本の置かれた長期不況という経済状態を鑑みると、ケインズの議論は非常に有効であるものだから、ケインズに軍配をあげたくなる。とは言いつつも、どちらの勝ちか負けかという見解はつまらないものだ。

 ハイエクは言うだろう。仮に一時的に景気回復がなされたとしても、政府の介入が続く限り、それにより再びバブルや金融危機が起こされるのだと。もちろん、ケインズは政府の介入が不要になれば辞めればいいだけだと答えるだろう。しかしながら、いったん介入をし始めると、なかなかやめられないのが為政者ではある。

 「ケインズとハイエク」と検索してみると、著者や小論が多数存在することからもわかるように、しばしば両者は対比される。市場経済が継続し、それが不安定性をはらむものである以上、ケインズとハイエクは今後も十分に比較検討され続けるであろう。本書はそれを示してくれる好著だ。

《30年代の「世界恐慌」。その原因や対処法をめぐりケインズとハイエクは論争を繰り返した。リーマンショック後の「世界的経済危機」の核心を探るため、経済学史に偉大な足跡を残した知の巨人の共通認識と対立点を徹底比較する》

この内容紹介に惹かれ、本書を買った。
長引く平成不況、曲り角に立つグローバル資本主義、ギリシャ危機、そしてTPP問題……等々を考えるうえで、何かヒントがあるのではないかと思ったからだ。

結論からいえば、それは私の勝手な思い込みであった。
ひと言でいえば、本書はケインズとハイエクを対比させながら、両者の経済および社会理論を概説した<教科書>のようなものである。
したがって、私はこの本を、はるか昔の経済学部時代にもどって、ねじり鉢巻きで読むしかなかった(それほど硬い本です、これは)。

<第一部>第一章は、ふたりの対比略伝で、「交友と衝突」というタイトルが付されている。

<第二部>第二章は、金利政策によって物価の安定を図ろうとするケインズにたいして、ハイエクは物価水準を安定させても景気変動は不可避だとする。
・第三章は、そうしたハイエクのケインズ『貨幣論』批判。
・第四章は、『一般理論』にいたるまでのケインズ経済学の概説と、ハイエクの「秩序を生み出す<市場>」という考え方をまとめる。

<第三部>第五章は、ハイエクの「法の下の自由」という思想と、ケインズの「自由を脅かす不確実性」という考え方を対比させる。
・第六章は、国際通貨に着目するケインズと、通貨発行を民営化するというハイエクの過激な論の紹介。
・第七章は、<慣行>をめぐる両者の対比。ハイエクがそこから<自生的秩序>が生まれるとするのにたいし、ケインズは逆に<流動性のワナ>に陥る恐れがあるとする。
・第八章は、保守主義をめぐる両者の微妙な差について。
・そして最終章の第九章では、ハイエクの自由論は<平時の論>、ケインズのそれは<危機の論>と結論する。

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