女の皮膚の下―十八世紀のある医師とその患者たち の感想
参照データ
タイトル | 女の皮膚の下―十八世紀のある医師とその患者たち |
発売日 | 販売日未定 |
製作者 | バーバラ ドゥーデン |
販売元 | 藤原書店 |
JANコード | 9784894342583 |
カテゴリ | ジャンル別 » ノンフィクション » 科学 » 医学 |
購入者の感想
十八世紀の女性と今日の女性とでは身体の体験の仕方は全く違っている、と言うとだれもが首をかしげるだろう。けれど、ドイツのフェミニストの歴史家である著者は、この本でそれを証明した。そして、身体は確固とした不変の現象だと当然のことのように考えてきた医学や歴史学、社会学、思想史などの学問の近代的な思いこみに根本的な変更を迫ったのである。 例えば、次のような奇妙なことが信じられるだろうか。 女性の月経は、子宮からだけでなく、鼻血、血たん、傷口からの出血としても出て來る。それらは男性にも認められ、また乳の分泌は男性にもある。
このような記載を初めて十八世紀ドイツの小都市アイゼナッハの医師シュトルヒが集めた約一六五〇人の女性たちの診療記録の中に発見したとき、著者は困惑した。「というのは、自分の身体を懸け橋にして、私は過去に入り込めなかったからである」
著者の研究に既成の医学はほとんど役に立たなかった。医学にとってこれらの情報はばかげた迷信の産物であり、捨て去るべき遺物に過ぎなかった。導き手となった方法は、人類学、神話学、美術史、言語学などの中にあった。「私は歴史家としての限界を越え、女性としても未知の国へ入っていった」
こうして、市民階級の女性、宮廷女官、牧師の未亡人などの訴えに耳を傾けた著者は、女性性や身体についての感じ方はその時代特有の姿をしているという認識にたどり着く。それはとりもなおさず、現代の私たちの身体感覚自体も時代の刻印を帯びているということの確認だった。
宇宙のリズムから切り離された個人主義的な身体感覚、健康への脅迫神経症的なこだわり、医療への過度の依存。これらもまた、産業革命以後の経済社会特有の「奇妙な」現象なのである。 この本は米国の科学史学会、医療人類学会から賞を授けられた。医療の改革や健康運動にかかわる人々からも大いに共感を得ている。
このような記載を初めて十八世紀ドイツの小都市アイゼナッハの医師シュトルヒが集めた約一六五〇人の女性たちの診療記録の中に発見したとき、著者は困惑した。「というのは、自分の身体を懸け橋にして、私は過去に入り込めなかったからである」
著者の研究に既成の医学はほとんど役に立たなかった。医学にとってこれらの情報はばかげた迷信の産物であり、捨て去るべき遺物に過ぎなかった。導き手となった方法は、人類学、神話学、美術史、言語学などの中にあった。「私は歴史家としての限界を越え、女性としても未知の国へ入っていった」
こうして、市民階級の女性、宮廷女官、牧師の未亡人などの訴えに耳を傾けた著者は、女性性や身体についての感じ方はその時代特有の姿をしているという認識にたどり着く。それはとりもなおさず、現代の私たちの身体感覚自体も時代の刻印を帯びているということの確認だった。
宇宙のリズムから切り離された個人主義的な身体感覚、健康への脅迫神経症的なこだわり、医療への過度の依存。これらもまた、産業革命以後の経済社会特有の「奇妙な」現象なのである。 この本は米国の科学史学会、医療人類学会から賞を授けられた。医療の改革や健康運動にかかわる人々からも大いに共感を得ている。