見てしまう人びと:幻覚の脳科学 の感想
参照データ
タイトル | 見てしまう人びと:幻覚の脳科学 |
発売日 | 販売日未定 |
製作者 | オリヴァー・サックス |
販売元 | 早川書房 |
JANコード | 9784152094964 |
カテゴリ | 本 » ジャンル別 » 科学・テクノロジー » 科学読み物 |
購入者の感想
脳炎後のパーキンソン症候群を主題とし、ロビン・ウィリアムズとロバート・デニーロが演じた『レナードの朝』(原題:Awakenings)を書いたオリヴァー・サックス。いくつもの著作があるが、今度の本は、幻覚を体験したことのある人、している人の主観が豊富に書かれた本を書いた。幻覚は本人にしか見えなかったり聴こえなかったりするから幻覚なんだが、あらゆる背景で出現する幻覚について書かれており、ワクワクしながら読める。この本を読むまで知らなかったのだが、彼自身、ドラッグも含めていくつもの幻覚体験があるとのこと。自身の体験も書いてあり、よりリアルである。表紙。帯がついてるが、めくるとそこにあったはずの目が、、、、。
奇妙な症例を淀みない文章で紹介する、脳神経科医のオリヴァー・サックス。そんな彼が本書で焦点を当てるのは、「幻覚(hallucination)」だ。何もないのに見えてしまう人、聞こえてはいけないものが聞こえてしまう人、そんな人たちが本書の主人公である。
最初のシャルル・ボネ症候群の話から最後の幻肢の話まで、サックスの著書らしく、奇妙な症例とその患者たちがこれでもかというほどたくさん登場する。たとえば、自分の身体が伸びたり縮んだりするように感じる、「不思議の国のアリス症候群」の患者。あるいは、自分の分身を目撃し、しかもその分身と相互交流をはじめるという「ホートスコピー」、などなど。しかし、本書でなんと言っても印象的なのは、サックス自身の幻覚体験だろう。時代のゆえなのか、かつてはLSDや大麻、あるいはモルヒネなどをずいぶんやっていたサックスである。「なんだ、何も起こらないじゃないか」と思った直後に、目の前の世界が一転し、すべてが幻覚だったと判明する――そんな自身の体験が生き生きと描写されている。
他方で、本書の惜しいところもまたサックスらしいものである。臨床例を多数紹介する著者であるが、では脳のどんな状態がそれぞれの症状を引き起こしているのか、その点に関する説明は今回もけっして多くない。症例の紹介とその原因の説明とのあいだで、もう少しうまくバランスがとれないものかと毎度思ってしまう。
またサックスは、自分が実際に診察した患者のみならず、手紙でやりとりをしている患者などについてもたびたび言及している。しかし、後者の患者たちの発言をどれほど額面どおりに受けとるべきかについては、もう少し慎重になってしかるべきだと思うのだが。
というように、よくもわるくも、いつものサックスらしい本である。ちなみに、サックスももう御年81だとか。衰えないその執筆意欲は、間違いなく「ブラボー」だろう。
最初のシャルル・ボネ症候群の話から最後の幻肢の話まで、サックスの著書らしく、奇妙な症例とその患者たちがこれでもかというほどたくさん登場する。たとえば、自分の身体が伸びたり縮んだりするように感じる、「不思議の国のアリス症候群」の患者。あるいは、自分の分身を目撃し、しかもその分身と相互交流をはじめるという「ホートスコピー」、などなど。しかし、本書でなんと言っても印象的なのは、サックス自身の幻覚体験だろう。時代のゆえなのか、かつてはLSDや大麻、あるいはモルヒネなどをずいぶんやっていたサックスである。「なんだ、何も起こらないじゃないか」と思った直後に、目の前の世界が一転し、すべてが幻覚だったと判明する――そんな自身の体験が生き生きと描写されている。
他方で、本書の惜しいところもまたサックスらしいものである。臨床例を多数紹介する著者であるが、では脳のどんな状態がそれぞれの症状を引き起こしているのか、その点に関する説明は今回もけっして多くない。症例の紹介とその原因の説明とのあいだで、もう少しうまくバランスがとれないものかと毎度思ってしまう。
またサックスは、自分が実際に診察した患者のみならず、手紙でやりとりをしている患者などについてもたびたび言及している。しかし、後者の患者たちの発言をどれほど額面どおりに受けとるべきかについては、もう少し慎重になってしかるべきだと思うのだが。
というように、よくもわるくも、いつものサックスらしい本である。ちなみに、サックスももう御年81だとか。衰えないその執筆意欲は、間違いなく「ブラボー」だろう。