「ズルさ」のすすめ (青春新書インテリジェンス) の感想

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タイトル「ズルさ」のすすめ (青春新書インテリジェンス)
発売日販売日未定
製作者佐藤 優
販売元青春出版社
JANコード9784413044400
カテゴリジャンル別 » 人文・思想 » 倫理学・道徳 » 倫理学入門

購入者の感想

書名が書名だけに、もう少し毒のあるというか狡智さを感じさせる内容を期待していたのですが、極めて真っ当な一書でした。どちらかというとやはり若い方向けでしょうね。個人的には意外なことは全く書かれておらず、経験的に妥当なことのみ記されていました。(故に★は4つなのですが・・・)なお、特に後半部分に評者が頷くことの多かった箇所が集中していました。

「最近うつ病にかかる人が増えているのは、力を抜くことができない、自分を休ませてやることができない人が増えているせいでもあります。むしろ、ときにはズル休みしてもいい。あえて休んで仕事や情報を遮断する。1日や2日休んだからといって、会社が潰れるわけではないでしょう。精神や肉体が悲鳴をあげているなら、その内面の声に従うべきです。・・・ 孤独な自分だけの時間をつくる。そして自分の内面を見つめ、自分がやってきたことを振り返る。そうすれば、自分にとって何が最も大切か、自分は何に時間を使うべきかが自然と明らかになるはずです」(94~5頁、同旨208頁)。
「「復讐するは我にあり」という言葉をご存知でしょうか。新約聖書「ローマの使徒への手紙」12章19節に出てくる言葉です。一見すると復讐をすすめているかのように聞こえるかもしれませんが、まったくの逆です。その意は「復讐は人間がするのではなく、神が行うもの。神の怒りに委ねよ」ということです。この場合の我とは、神が自らを指して言っているのです。人間同士が復讐し合ってはいけない。人間には人間に復讐する権利はないのです」(153頁、『半沢直樹』の「倍返し」を批判して)。」
「結局は、好かれようが嫌われようがかまわないと、どこかで自分を「突き放す」ことができるかどうか。これは自暴自棄や投げやりとは違います。自分を出せたら、あとはどう評価されてもかまわない。そういう「突き放し」です。「突き放し」ができる人の方が、周囲から見ると単純明快、曇りのない人格として受け入れられることが多いように感じています」(173頁)。
「問題社員を部下に引きとってはいけない」(198頁、誰かがゼロだと全てがパーになる「掛け算の仕事」では特に)

私は、早速本書を即読してみましたが、佐藤さんの扱われる11のテーマはどれも誰でも直面するものです。それから、佐藤さんのおっしゃる「ズルさ」とは、怠慢や詐欺ではなく、類に没せずに、ネオリベラルなアトム化した個人間の競争や、資本家階級のための金儲けに、我を忘れて没入してしまっている主権者国民の大多数である労働者たちに自覚的で、自己防衛的、抑制的な生き方を説いています。例えば、次の三原則は最重要です。

1、「人と比べない」
2、「嫌われることを恐れない」
3、「問題から目をそむけない」

最低限この三つの原則を公私共に貫徹できれば、ネオリベラルな今の日本社会でも我を忘れて他人である資本家のための金儲けに没入し、または利用され、他の同様の境遇にある労働者たちとの無益で不毛な個人間の競争によって、生活が陰鬱なものにならないようになります。私個人の経験則からも、佐藤さんの提示されている諸原則は至極現実的です。また、格差の拡大だけでなく、今月10日より施行の特定秘密保護法により、日本もこれからさらに高度な管理社会、警察国家になりますが、そんな滅茶苦茶な窮屈な世の中で、どう生きるべきか?何が必要なのか?それは、佐藤さんによればやはり中間団体の重要性に行き着きます。

佐藤さん:向き合うべき問題から目をそらさないためには何が必要なのでしょう。結論から言えば、僕は仲間やコミュニティだと考えています。(中略)大上段に構えて政治的な運動を行うより、これからは自分の周りにどれだけ一緒に問題を共有できる仲間を持っているか。その強い結束と信頼関係を大事にする方が、ずっと強い生き方です。厳しい、不安な時代だからこそ、最後に生き残るのは自分の足下をしっかり作り上げた人なのです。(本書、PP.56-7)

本書はネオリベラルな激化する競争に、我を忘れ疲弊した日本の全ての勤労者、社会生活者の必読書です。

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青春出版社から発売された佐藤 優の「ズルさ」のすすめ (青春新書インテリジェンス)(JAN:9784413044400)の感想と評価
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