ポリアーキー (岩波文庫) の感想

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参照データ

タイトルポリアーキー (岩波文庫)
発売日販売日未定
製作者ロバート・A.ダール
販売元岩波書店
JANコード9784003402917
カテゴリジャンル別 » 社会・政治 » 政治 » 政治入門

購入者の感想

20世紀の米国政治学を代表する本の一冊。
Robert A. Dahl, POLYARCHY: Participation and Opposition, Yale University Press, New Heaven, 1972の翻訳。

宇野重規教授が解説で、この本を「二〇世紀の政治思想の古典として読むべき時期が来ているのかもしれない」と述べていることに同感である。

私個人としては、大学に入って政治学に興味を持ち、最初に読み始めた本の一冊。
当時、三一書房から出ていた。
この本の明晰な分析と、理論の射程の広さに強く感動したことを思い出す。
以来、この本を手に取ることがなかったが、最近岩波文庫から出されることになったので、懐かしくなって再読した。

「ポリアーキー」とは、政治学用語としては既によく知られているとはいえ、今だ一般には耳慣れない言葉だろう。
「民主主義」という言葉の多義性(一方では理想(規範)を表し、他方では具体的な制度(事実)を表す、欧米的な議会制民主主義も、ソ連、中国のような民主集中制もいずれも「民主主義」を標榜する等々)を回避するために、ダール自身が創った言葉。
民主政を民主化する(to democratize the democracy)というややこしい混乱を避けるため。
一人の支配による君主政(Mon-archy)でも、少数の支配による寡頭政(Olig-archy)に対して、民衆による政治(poly-archy)ということだ。
そこで、ダールは、ポリアーキーであるか否かの判断基準として、シンプルに二つの基準、すなわち1包括性(政治に参加=選挙に参加し公職に就くことができる範囲)と2自由化(政権に対して公的に異議申し立てできる制度的保障)のみを挙げた。
さらに、、これらのいずれも達成できていない「抑圧体制」(hegemony)が「ポリアーキー」に移行する三つの過程を考察し、それを可能とする条件として、1一国の社会経済的水準、2不平等の質と程度、3下位文化の分裂の程度、4政治活動家たちの信念(思想)を挙げている。

キャッチーさが残るポリアーキー、20世紀を代表する古典としては、
至極理解できるし、こうした概括書を手っ取り早く知っておきたい
という現代人にしてみれば、格好の読書候補である。

だが、過去の政治形態と現在の地球を取り巻く、人々の意識の変容。
IT化による高度情報社会、参加型の情報発信とそれによる政治の関わりと
人々のモラルの推移なんかを体感している現代人にしてみれば、
このつづきの<語り>を聞きたかったところが正直な感想だ。

対談本を載せてくれたのはありがたいが、解説者の宇野重規も
ネット社会における人々の政治と生活労働の様態、9.11や3.11以降の
意識の変化に全く触れないで事を進めていくのに何ともザ・古典という
印象が拭えない。

特に日本に関しては、ダールによる考察がなされるまで(専門ではない)いっておらず、
日本人特有の森と水を大切にし、「徳」でもって祭事を祀るという、
世界中どこを探してもないような価値意識を共有している特異な国では、
西欧のモノサシでは上手く計れないのではと疑ってしまう。

この続きを研究されている日本の御仁はおらぬのだろうか・・・?

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