甘味辛味―業界紙時代の藤沢周平 (文春文庫) の感想

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参照データ

タイトル甘味辛味―業界紙時代の藤沢周平 (文春文庫)
発売日2012-12-04
製作者藤沢 周平
販売元文藝春秋
JANコード9784167192556
カテゴリ文学・評論 » エッセー・随筆 » 著者別 » は行の著者

購入者の感想

【1960年から74年まで藤沢周平は「日本加工食品新聞」の編集長を務めていた。藤沢ファンには知られた事実だが実際に藤沢さんが何を書いていたかとなると知らない。知りたいのだけれど時代小説家としての自分の中のイメージが崩れるのが怖い。それに業界紙の縮刷版は地元の図書館に果たしてあるかどうか…】

この本は私のそうした「わがままな不安」に見事に応えてくれたものです。

編集長として当たり前のことかもしれませんが藤沢さんは実によく食肉・ハム業界のことを勉強し、時代を読んでいます。両者を結びつけて遠慮がちに心配し、それを絶妙な味わいのエッセイに仕立てている。それが「日本加工食品新聞」一面下に躍った「甘味辛味」。ほんとうにおもしろい。目の付けどころ、気取りのなさ、ウィット、武蔵野の風景描写…。気がつくと昭和経済小説のつもりで読んでいました。これが本書の前半。

後半は徳永文一さん(読売の元編集委員)のパート。当時の関係者への、実に行き届いて、情緒過多に陥らない硬派なノンフクション…評伝あるいは昭和40年代の藤沢周平をめぐる男たちの群像小説と呼んでも差し支えない見事な作品です。藤沢周平のまわりにはどういうわけか小説家を志望する男たちが集い、志がかなった人もそうでない人もそれぞれに書き継いで生きてきた…このことに勇気づけられる(私のような)読者もおそらくいることでしょう。

ちなみに私は文春に限らず藤沢本、池波本、向田本が正直なところ苦手、食わず嫌いをするほうです。二番煎じの先入観につい身構えてしまうのです。本書もそれに近いかなといくぶん構えて入りました。が、とんでもない。一粒で二度おいしかった。ごちそうさまでした。

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