ワイルド・スワン(下) (講談社文庫) の感想

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タイトルワイルド・スワン(下) (講談社文庫)
発売日販売日未定
製作者ユン チアン
販売元講談社
JANコード9784062637732
カテゴリ文学・評論 » 評論・文学研究 » 外国文学研究 » 英米文学

購入者の感想

「誰も知らなかった毛沢東」で激しい毛沢東批判を繰り広げた著者が、自らの一家の激動の歴史と中国の政局の動きを重ねて描いた感動のノンフィクション作品の下巻。上巻が著者の曾祖母、祖母への賛美・追悼小説に終始して第三者が読む価値がほとんど無かったのに比べ、中巻、本巻と上述の「誰も知らなかった毛沢東」で描いた毛沢東の狂気的統治時期と同じ時代を、著者の一家を中心に民衆側から描いた貴重な作品。

本巻では文化大革命の一環として、毛沢東が自分の潜在的敵となり得る知識人、青年層を農村に下放して「思想改造」を行なおうとしたおぞましい有様を、著者の体験を通して描き読む者の心に迫る。農村で著者が見たものは、毛沢東の「大躍進」政策の惨めな失敗。待っていたものは強制労働。著者の心にも、共産主義への疑念が芽生え始める。著者の一家の歴史を刻むという意図もあり、幼かった弟達が次第に逞しく成長する姿も描かれる。著者が、農村に下放された事もあって、他の巻よりも草花などの自然に関する描写も多い。これは単に、農村で働いたという事だけでは無く、著者の視野が毛沢東思想一辺倒ではなく、少しづつ拡がっている事を示唆しているように思える。そして、遂に毛沢東自身への疑念が著者に生じる。江青らの狂気じみた政策(「生産を停止することこそ、まさに革命である」、無知への礼賛etc.)の裏には毛沢東がいるのだと。

祖母が死に、父も政治の矛盾の中で非業の死を遂げる。そして、毛政治の中で何とかバランスを取ってきた周恩来が死に、ついには毛沢東自身が死ぬ。続いて起こる江青ら四人組の追放。現実路線のト小平の復権。著者はイギリス留学の道を勝ち取って明日へと羽ばたく。エンディングにふさわしいシーンであるが、ここに至るまで著者本人を初めとする一家の人々、そして中国民衆の苦労は如何ばかりだったろう。突然の共産主義、文化大革命という嵐の時代を、民衆の視点から描いた感動のノンフィクション。

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