シネマトグラフ覚書―映画監督のノート の感想
参照データ
タイトル | シネマトグラフ覚書―映画監督のノート |
発売日 | 販売日未定 |
製作者 | ロベール・ブレッソン |
販売元 | 筑摩書房 |
JANコード | 9784480871121 |
カテゴリ | ジャンル別 » 文学・評論 » 評論・文学研究 » 日本文学研究 |
購入者の感想
1999年12月18日、映画監督ロベール・ブレッソンは98歳でパリで死去。
今ではほとんど誰も知る人がいないといっても過言じゃない映画監督ですが、私にとっては、ジャン・リュック・ゴダールの『中国女』より以前に大好きなアンヌ・ビアゼムスキーが出演している、数少ない映画である『バルタザールどこへ行く』を撮った監督として忘れられない人です。
プロの俳優を一人も使わないで、芝居じみた演技を嫌って、感情を抑えたかたちで行われる彼の映画術は賛否両論あるでしょうが、時として音楽も何もない静寂の世界は、逆にものすごい迫力で身震いするほどすばらしい感動を与えてくれます。
映画から感じるその繊細さやひたむきさは、おそらくロベール・ブレッソンその人の人間性そのものなのだと思います。
あっ、それから、書名のシネマトグラフというのは、かの有名なリュミエール兄弟が1895年に発明した撮影機・映写機のことで、映画のことをシネマというのはこれが由来。
残念ながら、発明王エジソンの開発したキネトスコープなるものは、映画の元祖となるには幼稚すぎて覗きからくり程度の代物でした。
それはともかく、ロベール・ブレッソンは自らの造形物を、映画とは呼ばずにシネマトグラフと称していたらしくて、それは多分あのリュミエール兄弟が、世界で最初に映像に撮ったのが、走って来る蒸気機関車であり自動車だったこと、そして動くそれらを生まれて初めて目にした人たちが驚愕の目で見た、そういう人間の根源的な原初の感動を呼び起こすものを、自分の手で作りたかったのではないかと思います。
記述日 : 2009年12月18日 23:43:01
今ではほとんど誰も知る人がいないといっても過言じゃない映画監督ですが、私にとっては、ジャン・リュック・ゴダールの『中国女』より以前に大好きなアンヌ・ビアゼムスキーが出演している、数少ない映画である『バルタザールどこへ行く』を撮った監督として忘れられない人です。
プロの俳優を一人も使わないで、芝居じみた演技を嫌って、感情を抑えたかたちで行われる彼の映画術は賛否両論あるでしょうが、時として音楽も何もない静寂の世界は、逆にものすごい迫力で身震いするほどすばらしい感動を与えてくれます。
映画から感じるその繊細さやひたむきさは、おそらくロベール・ブレッソンその人の人間性そのものなのだと思います。
あっ、それから、書名のシネマトグラフというのは、かの有名なリュミエール兄弟が1895年に発明した撮影機・映写機のことで、映画のことをシネマというのはこれが由来。
残念ながら、発明王エジソンの開発したキネトスコープなるものは、映画の元祖となるには幼稚すぎて覗きからくり程度の代物でした。
それはともかく、ロベール・ブレッソンは自らの造形物を、映画とは呼ばずにシネマトグラフと称していたらしくて、それは多分あのリュミエール兄弟が、世界で最初に映像に撮ったのが、走って来る蒸気機関車であり自動車だったこと、そして動くそれらを生まれて初めて目にした人たちが驚愕の目で見た、そういう人間の根源的な原初の感動を呼び起こすものを、自分の手で作りたかったのではないかと思います。
記述日 : 2009年12月18日 23:43:01
筑摩書房も参加した出版社4社の共同企画「書物復権2006」における投票上位書籍に選ばれ、
晴れて2006年9月中旬再販されることが正式に決定しましたね。かねがね映画ファン
必携の良書と思っていましたのに絶版状態となっていた事を勿体無く思って
いたのでこれは本当に素晴らしい出版社の判断だったと思います。
文体は時にアフォリズムのように散文的に、情熱的に。ブレッソン14番目の作品と呼んでも
差し支えないほど、多くの示唆や驚きに満ちていると思います。映画製作現場において発生する
日々の労苦や理不尽さ、また時に起こる奇跡、自らの目指す理想をブレッソン本人独特の言い回し
で非常に率直に吐露しており、これを読んだ方の中から「シネマトグラフ」の後継者を
自認する人が1人でも現われてくれることを思わず願わずにはいられません。
晴れて2006年9月中旬再販されることが正式に決定しましたね。かねがね映画ファン
必携の良書と思っていましたのに絶版状態となっていた事を勿体無く思って
いたのでこれは本当に素晴らしい出版社の判断だったと思います。
文体は時にアフォリズムのように散文的に、情熱的に。ブレッソン14番目の作品と呼んでも
差し支えないほど、多くの示唆や驚きに満ちていると思います。映画製作現場において発生する
日々の労苦や理不尽さ、また時に起こる奇跡、自らの目指す理想をブレッソン本人独特の言い回し
で非常に率直に吐露しており、これを読んだ方の中から「シネマトグラフ」の後継者を
自認する人が1人でも現われてくれることを思わず願わずにはいられません。