社会福祉政策 -- 現代社会と福祉 第3版 (有斐閣アルマ) の感想

　日本では、社会福祉が戦前の社会事業を受け継いだ貧困・低所得者を対象にした施策として狭く限定してとらえられてきました。しかし、本書は、そうした観点から離れて、人間が社会の中で生きて行くために必要なものは何か、というヒューマンニードの視点から書かれています。このため、これまでは社会福祉の範囲外とされた健康、医療、労働、住宅、教育などへの言及がなされ、それらとの関連の中で福祉サービスをめぐる諸政策の原理と実際が解説されています。
　実は、イギリスの社会福祉研究や社会政策の教科書では、そのような構成はすでに確立された標準的なカリキュラムになっています。ですから、本書は、国際的標準に準拠して作成された教科書といえるでしょう。ちなみに、本書では、イギリスの福祉学の創始者であるリチャード・ティトマスに関する14の話題が「コラム」として提供されています。この学問を志す人々が知るべき必須の情報が盛り込まれており、読むべき価値がある、本当に参考になる本といえるでしょう。