教養としての官能小説案内 (ちくま新書) の感想

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タイトル教養としての官能小説案内 (ちくま新書)
発売日販売日未定
製作者永田 守弘
販売元筑摩書房
JANコード9784480065414
カテゴリジャンル別 » 文学・評論 » 評論・文学研究 » 文学理論

購入者の感想

本書は、官能小説研究の第一人者である著者が、

官能小説について概観する著作です。

2部構成を取っており、

1部では、川上宗薫、藍川京さん、中村嘉子さん、草凪優さんなど

代表的な官能小説作家を紹介し、官能小説の変遷を追うとともに

そこに描かれた社会や家族、男女の姿を検討します。

つづく2部では、「OL系」「スポーツ系」など、官能小説のジャンルや、

官能小説特有の表現をつぶさに分類・解説します。

『四畳半襖の下張』事件、『チャタレイ裁判』で「わいせつ」と指摘された部分や

近年の男性の嗜好など、全く知らなかった話が多く興味深かったですが、

個人的に、もっとも印象的だったのは、

創作のために多くの女性と関係を持った川上宗薫が

ガンで亡くなる間際に、『死にたくない』という闘病記を記したという記述です。

いやらしさよりも、とにかく著者の官能小説への愛が伝わる本作。

著者と同じように官能小説が好き…という方はもちろん

教養として知っておきたいという方には、つよくオススメの一冊です。

いわば日本官能小説の入門書。一人で年間20冊も出版する作家がいるほど、このジャンルの書籍は大量生産されています。そんな中、自分の趣味と照らし合わせながら、何から読もうか迷った時の参考になりそうです。例えば「官能解放の時代」を切り開いた団鬼六から文学としての流れを追うもよし。サラリーマンが性豪ぶりを武器に成功を収める「サクセスもの」で、現実を忘れるもよし。お気に入りの作家を見つける、きっかけにもなりそうです。

第一部では官能小説の歴史を追っています。警察が猥褻雑誌に目を光らせていた黎明期、摘発を逃れるための婉曲表現は、逆に読者の淫心を煽りました。後に女流作家が登場すると、実感のこもった女体の感覚表現で男性読者の歓心を得ていきます。また時代を反映して、官能小説には様々な傾向が現れるようです。女性上位の時代は凌辱系が流行ったり、新入社員があふれる新年度にはOL物が多く出回ったり。官能小説にまで世相は反映される様子が分かります。

第二部ではジャンル区分と表現技法が整理されています。数多くの作品を読んできた著者ならではの解説が加えられています。ジャンル分けは女の年齢、職業、男の立場のそれぞれの視点で分類されています。さらに時代物として、「くノ一」や女剣士等の分類が列挙されており、官能小説の世界に広がる妄想力の奥深さが垣間見えます。

随所に作品の一部が抜粋してあり、ついつい本編を読みたくなる一冊です。

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