アガメムノーン (岩波文庫) の感想

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タイトルアガメムノーン (岩波文庫)
発売日販売日未定
製作者アイスキュロス
販売元岩波書店
JANコード9784003210413
カテゴリジャンル別 » 文学・評論 » 文芸作品 » ギリシャ・ラテン文学

購入者の感想

B.C.458年に上演されたギリシア悲劇である。10年にも及ぶトロイア戦争に勝利して凱旋帰国したアガメムノーン王を王妃クリュタイメーストラーが謀殺する。いわば大戦争の後に起ったクーデターである。しかし前半では戦争でもがき苦しむ民衆の描写が続き、民衆を代表する「コロスの長」も王の「舵取り」を批判して憚らない。王自身も自分を賛美することはない。戦争がいかに人を疲れさせ、狂わせるかを2500年前の文学は既に描いているのである。
そして『運命』とは何か、という哲学的命題も。カッサンドラーという予言者が重要な役割で登場する。彼女がいかに「真実」を予言しようとも、誰も彼女の予言を理解することが出来ない。彼女は自分が政変に巻き込まれて死ぬことを恐れない。自分が死んだあとで初めて「真実」が歴史的に評価される事を知っているからだ。世の中「本当のこと」を語っていることをそのときは理解しないで、後で「あの人は立派だった」と評価することが多くはないか。(太平洋戦争からバブル崩壊まで)古典を読んで自戒したいものだ。
この作品には古代の作とは思えないほど、大筋とは関係ないキラ星のような名言が続く。古典の魅力の一つである。「人の命を、黄金で商う軍神アレースが、槍を交える戦のさなか、秤を吊るし」とか「人間の性というやつは、人がつまずくと、よけいに蹴倒そうと、はやるものだから」とかである。こういう文学が先にあって、シェイクスピア等の名作が生まれたのだと納得した。

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