荒神 の感想

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参照データ

タイトル荒神
発売日2014-08-20
製作者宮部みゆき
販売元朝日新聞出版
JANコード9784022512048
カテゴリジャンル別 » 文学・評論 » 文芸作品 » 日本文学

購入者の感想

ド迫力の特撮映画を観たような読後感。

でも宮部みゆきらしさは、戦闘シーンより人々の心の動きを細かく描写することにこそあると思います。

一番心動かされたのは、かんどり(伝染病)の顛末でした。

 時は江戸時代、山奥の村を突然異変が襲う。住居は押しつぶされ、村人たちは熱湯を浴びせられたような火傷と異臭のなかで次々と殺戮されていく。このショッキングな冒頭シーンからたちまち物語の中に引き込まれた。
 舞台は二つの兄弟藩である。もとは一つであったが分離して、今は敵対関係にある。人物は最初それぞれ無関係に登場して物語が進行し、彼らの身辺で異変の前触れが次々に起きる。場面は人物の視点から描かれるから、彼らの不安や不審、恐怖を読者も共有する。場面は交互に転換して、しだいに異変は形をなしていく。高まっていく謎と緊張感。このあたりのサスペンス感あふれる盛り上げ方はさすがだ。そして、ためにためた緊張感が頂点に達して‥‥。あり得ない世界が現れる。
 だが、あり得ないことながら非常なリアル感。CGよりはるかに迫真性のある固唾をのむシーンが延々と展開していく。恐るべき描写力である。
 登場人物は最後に一点に収斂して、物語は読者の予想を裏切りつつ希望の余地を残す結末を迎える。
 人間の抱く憎しみと愚かさが怪物となり、世界を滅亡の淵へ導く有様が描かれる。同時にそれを打ち破る愛と叡智が人には宿ることも啓示される。作者は、映画『大魔神』から作品のヒントを得たということを書いておられた。エンターテイメントとしての醍醐味を十分味わえて、さらに人間の誰しもが抱える善悪二面性への内省へと読後感は誘う。

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