日中韓を振り回すナショナリズムの正体 の感想

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タイトル日中韓を振り回すナショナリズムの正体
発売日2014-10-03
製作者半藤 一利
販売元東洋経済新報社
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カテゴリジャンル別 » 社会・政治 » 政治 » 政治入門

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半藤氏、保阪氏はともに、明治から昭和への歴史をつぶさに研究して多くの著書を刊行しており、ナショナリズムの暴走が国を滅ぼすことを知り尽くしている。数多くの著書のうち、本書のテーマと関係が深いのは、半藤氏著『昭和史 1926-1945』や保阪氏著『昭和陸軍の研究』などである。本書の特徴は、両氏が豊富な歴史の知識を縦横に駆使して、ナショナリズムの正体を暴き出し、それに振り回されないための智慧を解き明かしていることである。権力者が利用(悪用)するナショナリズムの正体を知れば、近隣国と冷静に付き合える庶民の智慧が自ずから生まれることがよく理解できる。

まずナショナリズムとは何かを、両氏が説く。「ナショナリズムは愛国心と区別すべきである。愛国心はいわば郷土愛・共同体愛であって、自らの郷土や国が世界一だとは信じていても他人には押しつけない。愛国心は、軍事的にも文化的にも、本来防御的なのだ。ところがナショナリズムのほうは権力志向とかたく結びついている」(ジョージ・オーウェルの言葉を引用して、半藤氏)。保阪氏は、ナショナリズムを上部構造の国家ナショナリズムと、下部構造の共同体ナショナリズム(郷土愛や愛国心)に分けて考えることを説く。権力者は、愛国心の歪んだ部分である排外主義を自らが率先して、あるいは御用学者やマスコミを動員して煽り、国家ナショナリズムに連結させることで、戦争などの国家的な動きを後押しさせる。このプロセスは、まさに昭和史で日本が破滅へと歩んだ道そのものである。

半藤氏によれば、権力者は、日本人のモラルの高さ、国土の美しさ、伝統の素晴らしさなどを鼓吹して、国家主義(国粋主義)へと誘導することがしばしばある。戦前の「戦陣訓」(昭和16年)がその例である。これに誘導されて、不幸にも戦争末期に起こった玉砕や特攻作戦は、最悪の国家ナショナリズムの例であり、愛国心レベルのナショナリズムを踏みにじるものである。ところが、最近の戦記小説や戦争映画が、玉砕や特攻作戦を美談化して、愛国心を国家主義に転換しようとしており、実に危険な風潮である、と半藤氏は指摘する。

 日常的な郷土愛に基づく庶民のナショナリズムの感情を、日本的軍国主義の完成を急ぐ目的で「国家神道」に再編成した経過について詳しく検証しています。また、中国と韓国の民族主義発生の歴史的経過についても検証されていて、国家(権力者)間の対立に各国の国民が巻き込まれないようにするための知恵が随所に見られます。

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